うつ病で休職中の男性教員、実は「更年期障害」かも?知られざる不調の対処法 管理職やミドルリーダーが気を付けるべきこと

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しかし、各臓器に対応した治療薬が開発されるようになり、テストステロンの存在は影を潜めてしまいました。再び注目されるようになったのは、ここ20年くらいのこと。元気がなくなる男性が増え、テストステロンの補充による改善が見られることからまた脚光を浴びるようになったのです。

――それでも日本では、女性の更年期障害ほど注目されてこなかった印象が強いです。

そうですね。欧米、韓国、台湾、シンガポール、マレーシアなど、世界ではテストステロンの補充は医療として定着しました。例えばアメリカやイギリスでは定年がなく、成果が出せないとクビになることもあるため、自分のパフォーマンスが落ちた際にテストステロンを補充する男性がかなり多い。海外ではそんなふうに補充療法が一般的で、塗り薬や貼り薬、飲み薬など薬の種類も選べるのですが、日本では注射製剤以外の方法は保険診療内で認可されていません。

日本はガラパゴス状態だったわけですが、人手不足の中、コロナ禍で症状を訴える男性が増えたことを受け、ようやく課題として捉えられるようになってきました。厚労省も2022年から「性差にもとづく更年期障害の解明と両立支援開発の研究」という、男女別の疫学調査をスタートしています。

――堀江先生は、その厚労省の調査で男性更年期障害の研究を担当されていますね。

はい。現在の健康経営は“予防”が中心ですが、男性の更年期障害という“今そこにあるパフォーマンス”の課題を踏まえた新たな健康経営の指針が求められています。その土台となる研究として、ある公務員組織の調査を進めているところです。

女性更年期障害とは何が違うのか?

――なぜ、コロナ禍で症状を訴える男性が増えたのでしょうか。

テストステロンとはいわば、パブリックなホルモン。人間が仕事をして生きていくための活動を支えており、賞賛されると増え、緊張すると減ります。そうしたホルモンの働きは古来から変わりません。狩猟採取時代は外で獲物を得て帰ると家庭で評価され、それがテストステロンを高める原動力になっていたと考えられています。

現代社会では、職場での賞賛、あるいは居酒屋や趣味のコミュニティーでの認め合いなどがテストステロンを高めてくれていますが、コロナ禍では、そのように自分を認めてくれる場が外出制限によって奪われてしまったため、男性たちは弱ってしまったのでしょう。

ちなみに女性ホルモンの「エストロゲン」は、家族に愛を与えるといったプライベートの行動に作用します。女性は閉経の前後10年間、このエストロゲンが減少することで不調が生じます。これがいわゆる女性の更年期ですが、この間、実はテストステロンの量はそれほど変化しません。更年期が終わって仲間との旅行や“推し活”を楽しみ始める女性が多いのは、社会に意識を向かわせるテストステロンが優位に働くようになるからなのです。

――男性は、そのテストステロンの減少で元気がなくなってしまうのですね。

はい。ただ、遺伝子に閉経がプログラミングされていて例外なくエストロゲンの減少が起こる女性とは異なり、男性の遺伝子にはそうしたプログラムがありません。男性は、環境によってテストステロンの量が変わります。

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