【前編】「抗不安薬を飲んで学校に」、精神疾患で休職の教員が増えている訳 教員不足で余裕がなく人が根付かない現場

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医師からは、思い切って休んでしまったほうが回復は早いと言われるそうだ。しかし、自分が休んでも代わりはいない、周りに負担がかかることは身をもって知っている。学校においても責任ある立場で、どうしても休めなかった。

こうした山本さんのような人は、文科省の調査の精神疾患による休職6539人にも、1カ月以上の病気休暇取得者のうち精神疾患者とされる1万2192人にもカウントされていない。

管理職が手を尽くして代替教員は見つかったが…

それでも2023年度に入って、欠員の穴埋めができ、いくぶん状況は改善した。代替教員の確保に管理職が手を尽くしたからだった。

「ただ中には高齢の方もいらっしゃって、膝や腰に持病があるにもかかわらず、体育の授業をやらなければなりません。つねに体調面に不安があり、突然お休みされることもあります。いちばん残念だったのは、代替教員のうち1人が夏に辞めてしまったこと……。経験もあり期待も大きかったのですが、そのせいもあって難しい学年の担当で、統率できなかったことに責任を感じてうつになってしまいました。周りも配慮する余裕がなかったことにも原因があると考えています」

さらにそのあと産育休に入ってしまう教員が出るなど、年度初めにいったん改善されたかに見えた状況は結局元に戻ってしまった。だが、山本さんは今のところ教員を続けたいと言う。不安を抑える抗不安薬を飲んで、学校まで来れば、スイッチが入ると。それには理由がある。

「ブラックなところばかりにスポットが当てられますが、教員は子どもの成長を感じられるすばらしい仕事です。いいところ、やりがいをもっとアピールして、なりたいと言ってくれた人を採用したら教員不足にならないのではないでしょうか。一人ひとりの業務が多すぎるので、とにかく人を増やす以外に今の現場を改善する方法はありません」

教員不足が深刻化しているのには、教職員の精神疾患による休職が増えていることとも密接に関係している。休職者を減らす、また休職している先生に無理なく復帰してもらえる仕組みを整えていくことはもちろん、山本さんのように薬を服用しながら勤務を続ける教員を放置することも見直さなければならない。

後編では自身も若い頃、心に不調をきたした経験を持ち、現在は都内の小学校で校長を務める桜井健太氏(仮名)に話を聞いた。現在は管理職として休職者と向き合う立場でもある。

(文:編集部 細川めぐみ、注記のない写真:Graphs / PIXTA)

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