【産業天気図・不動産】住宅分譲に震災の痛手、ビル賃貸が下支えしても主要デベロッパーの通期業績は横ばい精いっぱい

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 主要各社のもうひとつの柱であるビル賃貸部門は、住宅分譲に比べると、安定した収益貢献が見込めそうだ。3月の地震発生直後こそ、福島原発の問題や夏場の電力不足への懸念などから、大阪をはじめとした西日本地区にオフィス機能を移転する動きが出たものの、5月の大型連休前にはそうした動きはほぼ収束した格好だ。

震災によるテナント企業の業績悪化懸念から、賃料減額要求の高まりが危惧されたが、足元は各テナントが被災地の自社拠点の復旧にパワーを割いていること、条件改定が2年に1度であるため景気変動に対して遅効性があることなどを背景にして、目立った賃料収入の減少や空室率の悪化はみられていない。また、耐震性や事業継続性の観点から、都心部の築浅・新耐震基準ビルに対する需要が高まっており、こうした物件を多く抱える大手デベロッパーにとっては追い風となりそうだ。

とはいえ、ビル賃貸の安定貢献や住宅分譲の下期の巻き返し(前年同期は期末の引き渡し集中期に震災が発生)があっても、上期の落ち込みを埋めきるには至らず、主要デベロッパーの今期見通しは前期比横ばい、もしくは若干の弱含みとなる見通しだ。12年にかけては、東京都心で新規ビルの稼働が相次ぐ。景気の先行き次第では、下げ止まり感が出始めていた賃料相場がさらに軟化する可能性も否定できない。住宅分譲が震災影響を脱して巡航速度に戻ったとしても、不動産業界を取り巻く環境は必ずしも順風満帆というわけでもなさそうだ。
(猪澤 顕明=東洋経済オンライン)

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