住友商事式“年功序列”制度、競争の促進と、きめ細かな指導育成で工夫凝らす
日々の仕事においては評価項目が9つあり、まず1として「信用・確実」、2に「総合力」(円滑なコミュニケーションとチームワーク)、3に「ビジョン」と続く。「人材開発」(能力開発を意味する)や「プロフェッショナル」(高度な専門性とスキルを身に付ける)が8、9となる。
ここに、同社の人材育成の特徴がある。
この十数年、大企業では成果主義が浸透したこともあり、「プロフェッショナル」という言葉が使われるようになった。プロ意識を持って仕事に携わることを意味するが、これにより仕事の専門性を追求することこそが最も大切であるかのようにとらえられる風潮がある。
同社は「プロフェッショナル」はもちろんのこと、「信用・確実」や「総合力」をも人材育成や評価の大きな軸としている。
海外65カ国に115の拠点を構えるだけに、さまざまな業種の仕事や大規模なプロジェクトに対応していく力が必要となる。この力を身に付けるためには、まずは商社人として、組織人としての質の高いコミュニケーションやチームワークが求められる。人事部はそれを見据え、入社後早いうちから「総合力」(円滑なコミュニケーションとチームワーク)などを体得させることを重視しているのだ。
すべての社員が競争に参加
「基幹職A級」になると、今度は5つの「グレード」(等級)に分けられる。その5つとはグレードの頭文字を取り、「G1」「G2」「G3」「G4」「G5」。
通常は「G5」からスタートする。「G4」はチーム長やチーム長補佐、「G3」は課長、大きなチームのチーム長、「G2」は部長、「G1」は本部長補佐などになっている。早ければ30代半ばから後半にかけて「G3」に、40代前半で「G2」になる。
これらは、大企業でよく見られる職能資格制度、つまり、入社年次や年功に沿って係長、課長から部長などへ昇格していく制度に思えるが、実はそうではない。「G1」から「G5」までは年功で決められるものではないのだ。その時々に担っている「期待役割」の大きさに応じて決まっていくものだ。