【リポート】国内・海外大学の総合選抜型(AO)入試に必要な知識と指導とは エッセイ・推薦状に生徒の「ブランド」を出して
ステップ3は、エッセイのテーマや、大学で研究したい課題を探求した。課題・テーマは「自分が本当にやりたいテーマ」であるとともに、自分の体験や経験から見つけたものであるという点も重要になる。身近にあることの「観察」から、「体験・経験」を基に「洞察」して、「しっくりしない」という不調和を解決したり、新しいプロセスを提案したり、従来の認識を変えたりすることがイノベーションにつながる。
例えば米国では、金髪白人のバービー人形に代わって、髪、顔、肌の色や形をカスタマイズできるアメリカンガールという人形が登場している。この背景には、米国社会の人種構成の変化があると洞察できる。参加者は小グループに分かれたワークで、新しい工夫や変革、イノベーションのきっかけとなる例を探した。

ステップ4は、自身の人物像を示すうえで重要となるビジョンや世界観について扱った。企業にとって、顧客に何を提供してどんな世界をつくり、どんな会社になりたいか、というビジョンは大切だ。同様に総合選抜型入試(AO入試)のエッセイでも、「私は何になりたいのか」「達成したいゴール」を示さなければならない。ただし、自身の活動経歴と、これからの目的・やりたいことが矛盾してしまうと、大学側には志願者の人物像が伝わらない。山脇氏は「インテグリティー(統一性)が欠かせない」と強調する。
エッセイと並んで重要な推薦状について、米国の高校生は1年生の終わり頃までには推薦状を書いてもらう教師を決め、コミュニケーションを深めていくそうだ。「どう優秀なのか。具体的に掘り下げた内容が求められる」と山脇氏は説明した。
最後に、クレアモントカレッジズで教鞭(きょうべん)を執った経営学者・ドラッカーの「未来を予測する最良の方法は自分でつくることだ」という言葉を引用した山脇氏は、「生徒たちは自分で未来をつくるという気概を持ってほしい。そのためには新しい発想・やり方、イノベーション・変革が必要になる。米国的な考え方かもしれないが、それが米国の高成長を続ける原動力になっている。恐れずに前を向いて自ら進んでいく姿勢が浮き出る出願書類になればいいと思う」とまとめた。
(文:新木 洋光、注記のない写真:梅谷 秀司)
東洋経済education × ICT編集部
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