――一方で、習近平が権力を掌握し続けるならば、台湾有事をあえて起こす必要はないという見方があります。また、2024年1月の台湾総統選挙では、親米路線で中国と距離を置く民進党が勝利する可能性もあります。
これらは、2020年代後半が特に危険な時期であることを懸念させる要因だ。もし民進党が次の総統選挙で勝利すれば、台湾の政治に激震が走るだろう。台湾が民主化に向かって以来、3回連続で総統の座を獲得した政党はないからだ。
そしてそれは習近平と習近平の周囲に、平和的だが強制的な統一への道は閉ざされていると認識させるだろう。中国は、北京との対話に前向きな国民党や他の政治主体に力を付与する形で台湾政治の軌道を変えることができないことを理解する。それが危険な事態となる1つの要因だ。
第2の要因は、習近平は台湾の解放が世代から世代へと受け継がれてきた問題だと明言しているからだ。つまり習近平には、自分の代で台湾の統一を成し遂げたいという思いがある。このような政治的な問題と軍事的、経済的な問題を併せて考えると、私は今後10年の後半を非常に懸念している。
危険なのは中国による技術的な隘路の支配
――中国が民主主義制度阻止への努力を世界で行っており、そうしたイデオロギー面での攻撃を最も深刻にしているのが、デジタル革命だと指摘しています。生成AI、量子コンピューター、半導体などの分野で、中国が今後勝利する可能性をどう見ていますか?
技術的優位性、あるいは少なくとも重要分野での技術的優位性は、習近平政権下の中国の政策の重要な部分である。中国は、量子力学やAI、合成生物学、そのほかの分野に国家主導で大規模な投資を行っている。
私が考える危険とは、中国がアメリカやその同盟国に対して全体的な技術的優位を確立することではない。危険なのは、中国が技術的な隘路を支配することである。アメリカが他国に目を向けている間に、中国が大規模な投資を行う特定の分野で飛躍的に優位に立つことができるかもしれず、それによって地政学的なライバル関係に大きな影響を与えることになるだろう。
そのため、アメリカとその同盟国はより積極的なアプローチを取る必要があり、技術的な対抗には、2022年10月に先端半導体や半導体製造装置に対して行われたような輸出規制が必要になると思う。
また、ファーウェイや中興通訊(ZTE)を通じた中国の5Gの世界展開を遅らせる工夫も必要になるだろう。中国の5Gに対抗するにはアメリカの投資や中国企業に対する規制も絡んでくる。米中間の技術的なデカップリングのようなものは必要ない。それは不可能だし、それが賢明であるとも思わない。しかし、アメリカとその同盟国は、経済力と軍事力が最も重要な分野で優位性を守るために、より積極的に動く必要があるだろう。
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