子どもたちの「問題解決とメタ認知の力」を養う「話し合いの可視化」とは? カエルの合唱研究で得たテクノロジーを活用

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宮村氏の理科の授業

「1人1台のiPadと授業支援アプリ『MetaMoJi ClassRoom』を活用し、個々の考えや班ごとの見解をネットワーク上で共有しており、生徒たちはそれを見ながら班の話し合いを進めます。その際、Hylable Discussionがあると、生徒たちは『こう話そう』と自分自身のメタ認知が促されると同時に、『周囲にどう働きかければよいか』という視点も持てるので、より議論が活性化しやすいと感じます。議論が深まることで、高校で学ぶ内容にまで自然とたどり着く子も。自動で分析がレポート化され、そのデータを1人1台端末に取り込んで使える点も便利だと思います」(宮村氏)

「子どもの隠れた能力を発見できるかもしれない」

こうした成果を聞くと、「国立の学校だから生まれる成果であり、公立の小中学校での運用はなかなか難しいのでは」と考える向きもあるだろう。しかし、水本氏は次のように語る。

「確かに『データを見せたら嫌がるのでは』と懸念を持たれる先生は多いですが、実際にはどんな子どももグラフを見ると、めちゃくちゃしゃべるようになります。この現象は、小学校でも新入社員研修でも、海外でも同じであることが確認されています。グラフは点数化されているわけではなく量を示しているだけで、声を出せば成果になるという単純な仕組みなので、競って話すようになるのかもしれません。また、シャイだと思っていた子が、実はリーダーシップを取って話していることがわかったという事例も聞いています。教員が子どもたちをフラットに見る力も養われることが見えてきました」

ただし、議論の質をより高めていくには、やはり教員側の工夫も必要だろう。宮村氏は、「生徒たちは答えが合っていないといけないというすり込みが強いので、私は正解を求めないようにしています。発表も『班で考えたことを話すだけ』という点を強調して伝え、『その考え方いいね』など、誰の意見にもポジティブに対応するようにしていますね」と話す。宮村氏の授業を見てきた北澤氏も、こう続ける。

「宮村先生は、例えば『重さと質量は何が違うのか』というテーマを設定していましたが、そんなふうに教師が5W1Hのような問題解決型の問いが設定できるかどうかも重要だと思います。また、授業は時間の制約がありますので、発表時間は何分か、何時から発表するのかなど、生徒に時間を明確に示すことも必要だと感じました。よい意味でのプレッシャーは集中力を高めてくれます」

Hylable Discussionの活用により、生徒たちの英語のスピーキングとリスニングの成績が上がった学校、職員会議でしゃべりすぎる人が減ってみんなが議論に参加できるようになった学校もあるという。そのほか、ホームルームで利用するケース、運動が得意な子も苦手な子もチームで取り組むことを目的に体育で使うケースなどもあるそうだ。

「インクルーシブに話し合う力が求められており、今後どの授業でも議論する場面はもっと増えていくでしょう。その際、科目横断的かつ継続的に対話のデータ分析をしていけば、子どもの隠れた能力を発見できるかもしれません。そのためにも、さまざまな環境で使うことができるように、技術開発を続けていきたいと考えています」(水本氏)

(文:國貞文隆、写真:ハイラブル提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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