「エクセル父さん」や「PDCA父さん」がわが子の中学受験を台無しにする理由 「受験=仕事」の勘違いが意欲も成績も下げる

早稲田実業学校の入試が「公式を証明」させる理由
わが子の中学受験に関わるとき、多くの父親は自らの受験体験を基にアドバイスしようとする。しかし、それこそが「親子関係をギクシャクさせ、成績低下を招く要因になりうる」と、中学受験のプロ家庭教師集団「名門指導会」代表の西村則康氏は指摘する。

中学受験のプロ家庭教師集団「名門指導会」代表/塾ソムリエ 「中学受験情報局『かしこい塾の使い方』」運営、主任相談員
(写真:本人提供)
「父親の記憶に新しい大学受験のノウハウをわが子の中学受験に用いようとしても、受験時の高3と小6では発達段階が大きく異なります。そのため、小学生には到底できない要求を押し付けることに。父親が中学受験を経験していた場合も、何十年前と現在とでは中学受験で問われる力は大きく様変わりしています」
2023年度の中学入試の傾向として、西村氏は「『こういう生徒に来てほしい』という学校ごとのメッセージを明確に打ち出した出題が目立った」と話す。
「難関校を中心に、『知識詰め込み型の勉強をした生徒より、自ら手を動かして考える経験を積んだ生徒が欲しい』と考える学校が増えています。そのような生徒を選抜するために、長い問題文の中から必要な情報を整理し、じっくり考える力を問うタイプの問題が多くなりました。こうした問題への対応力を育むには、とにかく大量の演習をさせる“タスク管理型のサポート”ではなく、『問題文をちゃんと読んでいるか』『自分の手を動かして考えているか』という視点で子どもに寄り添う“プロセス重視型のサポート”が求められます」

中学受験のプロ家庭教師集団「名門指導会」副代表 「中学受験情報局『かしこい塾の使い方』」主任相談員
(写真:本人提供)
「名門指導会」副代表の辻義夫氏も、同様の傾向を指摘する。
「例えば、早稲田実業学校では、『なぜその公式が導き出されるのかを説明しなさい』という出題がありました。これは、『公式の意味を自分の頭で考えるプロセスを経た生徒に来てほしい』というメッセージです。また、別のある学校の先生は、『某大手塾に通っていた生徒は、定期テスト前に“これさえやれば大丈夫”というプリントを求めてくる。そういう子には来てほしくない』と話しています。こうした思いが出題傾向にも表れています」
新出単元や「初見の問題」が好まれる傾向
また、小学校の「新出単元」からの出題も増えているという。
「新出単元は、小学校の教科書には載っていても塾の過去問集には載っていません。学校側は、『小学校の授業をおろそかにしていないか?』『塾の課題だけこなせば受かると思っていないか?』と問うているのです。過去には理科の『手回し発電機』、2023年度であれば算数の『資料の活用』を出題した学校が多く見られました」(辻氏)