「レッジョ・エミリア教育」特徴と家庭での実践法、「モンテッソーリ」との違いとは? Google保育所も導入、子どもの「感性」磨く教育
モンテッソーリ教育とは何が違うのか?
レッジョ・エミリア教育のプロジェクトは、テーマも期間も自由で非常に流動性が高い。子ども一人ひとりの気づきや興味に注目し、次の学びへと展開していく。「決められたマニュアルがない」のは、モンテッソーリ教育と比べても大きな特徴でもあるだろう。
例えば「モンテッソーリ教育」について、いしい氏は「とてもつくられた環境」だと話す。使用する教具や、その使い方が決まっているし、そうした教具は指定された場所から取り出し元の場所に片付ける必要がある。もし、教具を好きに組み合わせている子がいれば「それは違うよ」と伝えなければならない。また、子どもの活動を「お仕事」と表現するように、活動の始まりと終わりにはルールがあり、取り組みにも「完了」や「達成感」が求められる。
一方で、レッジョ・エミリア教育では、外に出て街の廃材などを自由に使いながら、周りと相談しつつ好きなように活動することが可能だ。そこには、決まっていないからこその難しさがある。
子を徹底的に観察し、小さな成長の証しに気づく
身近にレッジョ・エミリア教育を取り入れた保育施設がなく、家庭での実践を検討する場合には、「まず徹底した観察から」といしい氏はアドバイスする。
「子どもが何に興味を持っているのかをしっかりと見極めることが第一歩です。散歩中に花に興味を持ったなら、植物図鑑を手に取れる所に置いてあげるだけで合格。本当は、子どもが何かに集中して静かにしているときこそよく観察して、物事のどこに心が引かれてどのような行動を取るのか、じっくり見てあげるのが理想です。しかしこれはあまり現実的ではありません。親も忙しいので、子どもがおとなしいときは家事を済ませたいですよね。そこで、まずは1日1つ、子どもが新しい発見をしていないか探してみてください。一緒にお風呂に入る時間などが活用できます」
わが子を観察する中で、親はついつい「汚さないでほしい」「もうお昼寝の時間……」などといった感情を抱いてしまう。しかし、そうした感情はできる限り排除し、先入観のないありのままの観察を心がけることが必要だといしい氏は指摘する。
「例えば子どもが床のゴミを拾ってきたら、多くの親は『汚いから捨てようね』と教えます。でも実は、子どもが伝えたいのは『つまめたよ!』という自分の成長だったりするのです。子どもの行動は、そのすべてが発達に必要なこと。『こんなに小さいものをつまめたの? すごいね!』と褒めると、子どもはうれしさでいっぱいの顔をするんですよ。危険なことでなければ、少し目をつむって『何を楽しんでいるのかな?』『指先を使えるおもちゃを用意してみようかな?』と考えながら観察してみてください。きっと、子育てが今よりも楽しくなりますよ」
多様な教育法があふれる現在、わが子に何が適しているのかと悩んでしまうことも多い。そんな親の思いに対し、いしい氏は「子どもの性格によるところも大きいです。秩序やマイルールを大事にするタイプはモンテッソーリ教育が向いているとか、興味が移りやすく、無関係なもの同士をかけ合わせて遊ぶようなタイプならレッジョ・エミリア教育……と分類することもできます。ただ、どの子どもも教育法も、真逆かつ極端な性質はありません。それぞれのメリットを家庭で取り入れるのもよい選択だと思います」と語ってくれた。わが子をしっかりと“観察”することで、何に向いているのかをよく見定め、最適な教育や学びの環境を用意することこそが、親に求められる力かもしれない。
(文:藤堂真衣、編集部 田堂友香子、注記のない写真:topic_kong / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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