節税保険、金融庁が頭を悩ます「規制」の抜け穴 明治安田生命にも立ち入り検査で広がる波紋

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節税保険の販売をめぐってエヌエヌ生命に行政処分を下した金融庁。いたちごっこが続く中、“撲滅”が難しい規制の抜け穴に頭を抱えている。

金融庁は2023年2月、保険本来の趣旨を逸脱した営業行為があったとして、外資系中堅のエヌエヌ生命保険に対して業務改善命令を出した(記者撮影)

節税保険をめぐり、外資系のエヌエヌ生命保険に対して2月17日に行政処分を下した金融庁。処分内容などを記した公表資料には、業務改善に向けて実施すべきこととして、適切な募集管理態勢の確立やビジネスモデルのあり方の検討など、さまざまな項目が並ぶ。

また処分理由に関する説明では、節税効果を過度に強調した保険募集が横行し、エヌエヌ生命として防止策が機能しているかの確認すら実施していない、という記載もある。

もはや「金融機関としての体をなしていない」(金融庁幹部)状態にあり、その経営責任は重大なはず。が、「経営責任の(所在の)明確化」という処分項目は、なぜか資料のどこにも見当たらない。

国外へ飛び立ったエヌエヌ生命の前社長

金融庁による行政処分において経営責任の明確化は、実施すべき項目として、必ずといっていいほど明記されているものだ。2022年7月のマニュライフ生命保険に対する行政処分でも、処分項目のいちばん初めに書かれている。

さらに言えば、マニュライフ生命のケースでは節税保険の販売を主導した当時の社長らが、アフラック生命保険にすでに転職していた。そのため転職組に対しては、経営責任をとらせる処分を金融庁が下せないという問題もあった。

それでも金融庁は責任追及の姿勢を緩めなかった。金融機関を対象とした「フィットアンドプロパー原則」という、取締役の資質や適格性に関する規定を持ち出し、アフラック側に粘り強く対応を求めた。その結果、前社長など転職組をアフラックの取締役から外したり、マニュライフから受け取った退職金を返納させたりするなど、あくまでアフラックの自主的な対応というかたちで処分につなげてみせたのだ。

転職による「逃げ得」を許さず、経営責任の明確化にこだわった金融庁が、いったいなぜエヌエヌ生命の経営陣に対しては、同じことを表立って求めないのか。

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