都スクールカウンセラー9割が「職場にストレス」、懸念される子どもへの影響 知られざる「不安定な雇用」と「専門性の軽視」
また、教員の悩みを聞いて支援することで間接的に子どもと関わることもあれば、発達の偏りが見られる児童生徒ついて、医療機関やさまざまな支援とつなげるべきかなどの助言や情報提供を行うこともある。さらに、「子どもや保護者、教員などの個人に対するアセスメント(見立て)だけでなく、『この学校は教育相談に関して理解が深いので、こう提言するといい』などと、学校という組織をアセスメントする力も求められる」と高畑氏は考えている。しかし、こうしたSCの仕事や専門性が理解されていないと感じることも少なくないという。
「教員から『ただ子どもの話を聞いていればいいので、余計なことは言わないで』と言われたことも。また、あるケースについて『まず様子を見ましょう』と伝えたところ、『はい、SCが “様子見で” と言いました! もう何もしなくていいってことだね』と返されたこともあります」(高畑氏)
SCの仕事とはいえない仕事を求められることも珍しくないそうだ。
「あるお子さんについて詳しい経緯を知らされないまま、担任から『担任が言うともめ事になるので、通級につなげたほうがいいと保護者に直接伝えてください』と言われることも。担任の考えを単に代弁するのがSCの仕事とは言えないと思います。しかし、経験が浅いSCはそうした場面で教員からの要望を断りきれず、押し切られてしまうこともあるようです」(高畑氏)
さらに深刻なのが、学校で問題が起こったときに、SCがスケープゴートにされやすいことだという。
「担任と保護者の関係がこじれたとき、SCだけで家庭訪問に行かされたり、『保護者説明会に出て』と言われたりすることも。それが勤務時間外だとしても、残業代は出ません。『何かあってもそのときはSCの責任にすればよい』という雰囲気すらある。実際にそう発言される校長先生もいます」(高畑氏)
専門性が軽視される背景には、「評価の仕組み」の問題もある。SCの評価は校長が行い、それを基に次年度の契約更新の有無が決まるが、その評価基準はSCに対して明らかにされておらず、伝えられるのは合否のみ。フィードバックがないため、都SC調査でも「今後のために改善していくこともできない」などの声が上がっている。
「どう評価されているかわからないため、SCの多くが『校長のさじ加減一つで職を失う』 という不安を抱いています。とくに威圧的な言動の多い校長の場合、校長と異なる意見は言いにくい。SCが雇い止めになることを恐れて意見をのみ込んでしまうことで、必要な支援が届かなくなってしまう子が出てくることも考えられます」(高畑氏)
こうした状況を受け昨年、心理職ユニオンは都に対してSCの業績評価基準の開示請求を実施。職務遂行力、積極性、勤勉性、協調性という評価項目が明らかになったが、神内氏は「専門性を評価する内容とはいえません。また、校長が評価する現行の仕組みでは、SCは校長の干渉を受けざるをえず、中立性と専門性を発揮しづらいでしょう」と指摘する。
また、スキルアップも個人の努力に委ねられており、学校に関わる新制度などの情報共有も十分にはなされていないようだ。
「SCも自身の仕事をしっかり理解し、スキルや資質を向上していく必要があると考えます。正しいアセスメントや助言をするために、学校の仕組みや新しい制度も理解していないといけません。しかし、会計年度任用職員にすぎないSCには研修の機会がなく、SC同士で情報交換をしたり、大学院時代のネットワークを駆使したりしてアップデートを図るしかない状況にあります」(高畑氏)
子どもたちを支える理想の「チーム学校」のあり方とは?
こうした環境では、文部科学省が求める“チーム学校”としての連携は難しい。スクールロイヤーでもある神内氏は、「スクールロイヤーも同じなのですが、“チーム学校”の概念がしっかり理解されていないと、問題が起こった際、学校は責任を取りたくないために、表向きは『連携』と言いながら、外部人材に押し付けてしまうことがあります」と話す。