地域格差が深刻、「外国ルーツを持つ子ども」の教育で教員が果たす重要な役割 日本国籍あるかないかは関係ない、問題の本質

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「例えば父親が日本人で日本国籍を持っていても、ほぼ母子家庭の状態で、日本語力に困難を持つ子どももいます。でも彼らのルーツへの配慮が、日本国籍があることによって薄れてしまうのです。とくにアジア系移民で、外国ルーツであることが見た目にわからない子どもならなおさらです」

「困難の本質は国籍ではない」子どもに寄り添った声かけを

「日本人の保護者が『公立の学校は外国人の子どもが多いから、自分の子どもは私立へ進学させたい』と言う声をとてもよく聞きます。でも本当の問題は国籍や出身そのものではなく、それが理由で引き起こされている貧困であることもあります。そして貧困は、さらにたくさんの問題を引き寄せてしまうもの。どの国の出身でもどんな経済状況でも、子どもたちが可能性を断ち切られてはいけません」

前述のグラフを引用した文科省の調査では、2021年度の日本語指導が必要な中学校卒業者の進学率は89.9%。全中学生等の進学率は99.2%だ。「ほぼすべての人が進学する中で、1割が進学しないというのは数字以上に深刻なこと」だと山本氏は語る。もし自分の教室に、外国にルーツを持つ子どもがいたら、教員はどうすればいいのか。

「今、学校の先生は本当に忙しいと思います。この問題は教員がすべてを背負うべきことではないし、学校の中だけで何とかできることではありません。でも子どもたちとつながる場所は学校しかないことも事実なので、子どもたちを地域や支援につなぐ役割を果たしてもらえたら。本来なら、学校に1人でもそうした子どもがいるなら、ソーシャルワーカーや専門知識を持つ担当者が学校を巡回する必要があると考えています」

この問題の最前線ともいえるエリアでフィールドワークをしてきた山本氏は、国の支援制度にも不足を感じている。

「これまでの取り組みは、自治体単位やボランティアの尽力で進んできたことが主で、全国一律での施策はまだまだ弱いのが実情です。だからケアに地域格差が生まれてしまうわけですが、活用できる支援制度を知らない先生もいると聞きました。まずは自分の自治体にどんな制度があるかを調べることも必要です」

山本氏が挙げる「教員がすべき最も重要なこと」は、彼らに寄り添う声かけと、個を認める姿勢を持つことだ。

同氏がインタビューしたある子どもは、英語圏の出身ではなかったが、教員に「英語の発音がきれいだね」と褒められたことで自信がつき、英語力を生かした入試方式で難関大学への進学を果たした。自分のルーツを強みと捉えて、外資系に就職した例もあった。またある子どもは、信じがたいことだが教員から「ばかなんじゃないか」などと罵倒され、「ああ、もう学校には行けない」と勉強への意欲をなくしてしまったという。

「日本人のクラスメートが外国ルーツの子どもを受け入れられるかどうかも、教員の指導の結果だと思います。前向きに勉強を続けてこられた子どもに話を聞くと、『先生に認めてもらえた』という経験を語る子どもが実に多いのです」

(文:鈴木絢子、注記のない写真:fizkes / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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