不登校を認めない「父親」の罪、原因見ず「甘え」と怒れば子は「引きこもり」に 経験者語る「葛藤」と陥りやすい思考、役割は?
「大切なのは、問題の『切り分け』です。課題は学校に行けないこと自体なのか、勉強が遅れることなのか、はたまた学歴やコミュニケーション能力なのか。不安要素に1つずつ対処法を考えると『霧』も晴れてきます。知識をつければ解決方法はいくらでもあるので、いつまでも悩まずとにかく情報を仕入れてほしい。そしてこの役割はお父さんの得意分野だと思います。例えば会社で問題が生じたときも、やみくもに『何とかしろ!』と部下を怒るのではなく、一緒に原因を探って対策を立てるでしょう?」(蓑田氏)
ただし、ここで忘れてはいけないのが子どもの内面を見ることだ。学生時代の部活動や受験で成功体験がある父親はとくに不安が募り、家族に怒りをぶつけて追い詰めがちだという。こうした対応は子どもがコミュニケーションを遮断するきっかけとなり、不登校だけでなく部屋からも出てこない「引きこもり」に発展してしまう。最悪、離婚や家族崩壊につながるケースもあるそうだ。蓑田氏は「不登校自体はなんてことありません。悲しい結末を招くのは、周囲の対応なのです」と指摘する。
不安なのは、子どもではなく父親である自分
とはいえ、いざわが子の不登校に直面すると、動揺してしまうのも当然だ。オンラインサロン「ぼちぼち・ちちの会」を主宰する市川明氏も、かつては息子の不登校を「理解するのに時間がかかった」と話す。
2021年9月から、不登校の父親向け「ぼちぼち・ちちの会」主催。 長男の不登校をきっかけに、不登校支援の活動を開始。 地元事業者の協力のもと、不登校向けイベントなどの企画運営も行う。写真の背景は毎週開催している駄菓子屋
(写真:市川氏提供)
「僕もそれまで、不登校は他人事でした。子どもが不登校になったとき、親にとって最初のハードルは『受け入れること』。僕もそうでしたが、つい父親は『このままじゃ生きていけないぞ』などと言ってしまいますよね。でも、レールから外れる不安を抱いているのは、子どもではなく自分だったと気づいたんです」
市川氏がそう気づいたきっかけは、息子に 「自分は何でこの世に生まれてきちゃったんだろう」と言われたことだった。
「ショックでした。優しい言葉をかけてきたつもりが、前提には『昔の息子に戻ってほしい』という思いがあった。その圧力が息子を追い込んでいたのです。あの言葉を聞いて、『息子を信じて寄り添わなければ』と思いましたね」
その後は母親が、息子とのささいな会話から「コンピューターやプログラミングに興味があるのでは」と思い当たり、コンピューターに詳しいスタッフがいるフリースクールに通うことに。現在はすでに成人した息子だが、今ではコンピューター関係の仕事に就くため専門学校に通っているという。当時を振り返って、「自分がふと話したことを気に留めてくれたことがうれしかった」と話すそうだ。

















