なぜ慶応は2026年までに「大学発スタートアップ300社創出」を目指すのか? 「経営のプロ人材」確保のためビズリーチと連携

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こうした実績や、寄付者として慶応大学のITやバイオ分野の研究助成に協力してきたつながりなどから、VC設立の相談を受けるようになり、KIIの責任者として白羽の矢が立ったという。KIIの役割について、山岸氏はこう語る。

「KIIのミッションは、学内の研究成果を社会実装すること。主に学内の研究成果から事業の種を見つけて精査を行い、資金を投じ、事業化への道をサポートしています。慶応には、10学部、14研究科、30研究所・センターがありますが、その中でも慶応の強みが生きて投資リターンが得やすい、IT融合領域と医療・健康分野が主な投資分野となっています。起業家やチームの状態、収益を上げて社会的課題を解決できるのか、時流と合っているか、株主の状況などを重視して投資判断を行っています」

投資先企業の経営に関与し、助言などを行うキャピタリストは山岸氏を含め7名いるが、全員が慶応大学出身者というわけではない。さまざまな見地からアプローチできるよう、さまざまなバックグラウンドを持った人材を集めたという。

「1社に対する投資額は5000万~3億円程度。1号ファンドは学内のスタートアップを中心に投資してきましたが、2号ファンドでは学外のスタートアップにも投資しました。現在、3号ファンドも構築中で、資金規模は150億円を予定しています」と、山岸氏は説明する。

経営プロ人材の確保のため「副業・兼業の客員起業家」を公募

こうした中、2021年11月、慶応大学は学内のイノベーション推進本部の中に、新たにスタートアップ部門を立ち上げた。これまでスタートアップを支援するハブがなく、改めて担当者を配置した格好だ。

「起業家教育情報の全学共有なども行いますが、この部門の一丁目一番地はやはり大学の研究成果を社会実装することにあります。これまで大学では教育と研究に重きが置かれてきましたが、研究成果の社会実装を通して社会貢献するという目的が加わったといえます。現在、伊藤公平塾長の下、私たちは社会の先導者を育成する大学を目指しており、グローバル化や研究力を高めると同時に、スタートアップについてもいっそう注力していこうと、それに特化した部門を新設したのです」

さらに、新たな動きも示している。22年12月に、転職サイトの運営や人材サービスを展開するビズリーチと連携協定を締結し、慶応発のスタートアップに対し、経営のプロ人材をマッチングさせる取り組みをスタートさせたのだ。

これまで「研究成果のシーズと研究者だけでは、スタートアップはなかなか回らない」という声が多かったと山岸氏は明かす。

「慶応出身者からなる『三田会』があるので、経営のプロ人材を探すのは簡単だと思われるかもしれませんが、約40万人もの卒業生から人材を選ぶ仕組みは三田会にはありません。これまでは、研究者に近い人材を連れてくるしかなかった。もちろんそれがヒットする場合もありますが、サイエンスを中心に研究成果も世界的なレベルに達する中、それに見合うベストな経営人材を選ぶことが大きな課題となっていたのです」

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