「ChatGPT」の爆発的な人気が招く懸念と大競争 AIの世界でたちまち目が離せない存在になった

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一連の動きで事業の展開が加速しているようにも見えるが、オープンAIのアルトマンCEOは、2023年1月にアメリカのメディア主催の対談イベントで「私たちは人々が望むよりも、ずっとゆっくりと技術を公開していく」と語るなど、慎重な姿勢を見せている。

ただ、メガテック企業たちはオープンAIの急激な台頭に触発されたかのように、生成AIを用いたビジネスへの姿勢を前のめりにしている。

グーグルでは、ChatGPTの出現で経営陣が社内に「厳戒警報」を出したといわれている。2023年2月2日、親会社・アルファベットの決算説明会でスンダー・ピチャイCEOは「グーグルはAIファーストの企業」とアピールし、言語モデル「LaMDA(ラムダ)」を早ければ数週間以内に一般提供すると明らかにした。

グーグルの研究者らは2022年9月、テキストから3D画像を生成するAI「DreamFusion(ドリームフュージョン)」も発表している。グーグルが対抗心を見せる中、マイクロソフトが今回、巨額の投資を決めたのは、オープンAIに莫大な可能性を見出したからだろう。松尾教授は今の状況を「『グーグルvs.マイクロソフト・オープンAI』という戦いが起きている。要は、ビッグテック同士の覇権争い」と指摘する。

ビッグマネーが飛び交う総力戦に発展か

「フェイスブック」を展開するメタ・プラットフォームズも2022年、テキストから動画を生成するAIツール「Make-A-Video(メイク・ア・ビデオ)」を発表。世界各地でクッキーなど個人情報に関する規制が強化され、広告事業の前提が揺らぐ同社にとって、新たなテクノロジーは重要なカギを握る。

グーグルの前日に開催された決算説明会では、メタのマーク・ザッカーバーグCEOが「生成AIのリーダーになるために研究を積み重ねる」と意気込むなど、社名にも取った「メタバース」と並ぶ注力分野であることを示した。

熱気が高まる生成AIをめぐる競争劇。ChatGPTとオープンAIが台風の目となり、IT大手のビッグマネーも飛び交う総力戦となりそうだ。

森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケ、コンサル、エンタメ産業などを担当。過去の担当特集は「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」「激動の出版」「パチンコ下克上」など。

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