伊藤忠が「リサイクル企業」への出資で見出す商機 祖業の繊維事業で「環境素材」開発に本腰

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「マーケットイン」と「SDGs貢献」を経営の2大柱に掲げる伊藤忠商事。環境配慮経営を標榜するだけではなく、新市場の開拓を狙っている。

エコミットは伊藤忠商事の出資をテコに衣料品リサイクルを大幅に拡大する方針(記者撮影)

伊藤忠商事が祖業である繊維事業で環境素材の浸透に本腰を入れている。2023年1月31日、伊藤忠はリサイクル・リユース事業を手掛けるベンチャー企業のエコミット(鹿児島県・薩摩川内市)に出資したと発表した。出資比率は20%未満。社会問題化している国内アパレルの廃棄問題解決に、一段と力を入れる格好だ。

エコミットは川野輝之社長が2007年に創業、建設機械や家具・家電などのリサイクル、リユースを展開する。回収物の種類や重量、回収ルートなどをデータ化し、CO2(二酸化炭素)の排出量を可視化するシステムを開発している。

伊藤忠は2022年3月にエコミットと業務提携して、国内で回収した衣服をリサイクルポリエステル素材「RENU」として再生し、販売してきた。今回の出資で連携を深め、RENUの事業拡大を加速させる。

出資を受けるエコミットの川野社長は、「(2022年度600トンの)衣服回収を2024年度には6000トンに増やし、ファッションロスの削減を目指す」と力を込める。

世界の廃棄衣料問題の解決への一歩

流行の衣服を低価格で提供する「ファストファッション」の広がりの裏で、大量廃棄が問題化しているのがアパレル業界だ。

国連貿易開発会議(UNCTAD)が、アパレル産業を石油に次ぐ環境汚染産業と指弾したのは2019年のこと。環境省が国内の衣服供給量を基に試算したところ、原料調達から製造段階までに年間9万キロトンのCO2が排出され、83億立方メートルの水が消費されていることが判明した。

1着当たりに換算するとCO2排出は500㎖ペットボトル255本を製造する排出量と同等となり、水の消費は浴槽11杯分になる。同省の調査では、これだけ環境に負荷を与える衣服を日本では毎年1人当たり、18枚購入し、12枚手放しているという。

「アパレル産業は川上から川下まで工程が多く、水の使用量も多い。その割に廃棄も多く、環境負荷が大きい。われわれのリサイクル原料を普及させることが、世界の廃棄衣料問題の解決への一歩と考えている」と、伊藤忠の繊維カンパニー繊維原料課・下田祥朗課長は話す。

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