先生になる人の傾向に見る「教育格差」問題の盲点、現場に必要な教育社会学 教育格差の実態とメカニズムを学ぶべき理由
もっとも、すでに教職課程の単位数は多いし、現職の教育関係者も多忙である。現時点でも、保護者(親)の学歴で子どもの学習意欲に格差があるといった断片的な情報であれば多くの教職課程や教員研修のどこかで言及されているかもしれない。しかし、その程度の情報の聞きかじりでは、むしろ、学習意欲を見せず反抗的な態度を示す児童生徒に対して「親が高卒だから」といった負のラベルを脊髄反射的に貼ってしまっても不思議ではない。
「なぜ、どのようにして、出身家庭のSES、出身地域、性別といった子ども本人が選べない初期条件である『生まれ』によって教育の結果に差があるのか」について、ある程度の期間をかけて体系的に学ぶ必要があるはずだ。
では、具体的に何を学べばいいのか。この問いに答えるために、構想5年をかけて16人の教育社会学者で『現場で使える教育社会学:教職のための「教育格差」入門(ミネルヴァ書房)』をまとめた。教育現場で有用になりうる教科書にするために、5時間の公開オンラインイベントを8回行い、現職の教員や大学生など延べ500人以上から草稿への批評を受け、改稿を重ねた。1人で読んでも多くの発見があるはずだが、大学の授業や教員研修として読書会形式をとれば、自分の知っている「現場」において「どのようにデータと研究知見を応用し実践できうるのか」を言語化できるようになるはずである。
(注記のない写真:Fast&Slow / PI)
執筆:龍谷大学社会学部社会学科 准教授 松岡亮二
東洋経済education × ICT編集部
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