先生になる人の傾向に見る「教育格差」問題の盲点、現場に必要な教育社会学 教育格差の実態とメカニズムを学ぶべき理由
基本的には、大学の教職課程への進学を自ら望み、授業に出席して単位を修め、教育実習を含めた要件を満たして免許を取得し、自治体や私立校の採用試験に応募し、選考を通らなければならない。換言すれば、本人が大学入試と採用試験を受けるという2つの選択をしたうえで、それぞれの選抜で一定のラインを超えなければ教員として採用されることはない。自己と他者による選抜というふるいにかけられているので、職業集団としての教員は、各年齢層の「平均的」な人とはならない。
事実、全国教員調査の結果(暫定値)によると、正規任用教諭の出身家庭の社会経済的地位(Socioeconomic status、以下SES)は、ほかの職業の人たちと比べても比較的恵まれていた。当然、この数値が示すのは職業集団としての平均像にすぎないので、非常に社会経済的に恵まれた家庭出身者もいれば、困難を抱えながらも教職に就いた人も含まれる。
ただ、全体として教師は大学進学層でもあるので、20代~50代のどの年齢層であっても社会経済的に恵まれた家庭の出身者が多かった。保護者(父母)が教師だと本人も教師になる世代間職業再生産の傾向も強かった。
教師の子ども時代の学校経験も、小中学校の「同級生」全体の「平均」とはいえない。例えば、教職以外に就いた同年齢層と比べて、中学3年生時点の学力の自己評価が平均的に高かった。また、全体と比べて、教師は中学生の時に学級委員(級長・クラス長)、生徒会役員、部活の部長などの経験者が多かった。さらには、中学3年時に大学進学するつもりだった割合がどの年齢層でも約8~9割だった。
これらは教師以外の職に就いた大卒者層と比べても明確に高い。教師については年齢層による違いはあまりないので、とくに大学進学率が低かった40代や50代ではかなり進学熱の高い層だったといえる。