GIGAスクール2年目「残念な学校、残念な先生」が広げるICT活用格差の行方 教育・校務のDXは意思決定を行うトップ次第

こうしたさまざまな校務をサポートするツールに「校務支援システム」があります。そして、個人情報のように機密性を高い状態で保持しなければいけない情報を取り扱うし、先生同士の連絡を行うためのチャットなど、いろんな機能を盛り込んだほうが便利だろうという発想で作られたものが「統合型校務支援システム」です。
これは一見すると便利そうですが、実はクラウド利用が前提になっていません。だから学校にいるときしか使えないし、ネットワークを分離しているから学習系と校務系のデータ連携ができません。そのせいでコロナ休校期間中も先生たちは出勤しなければならなかったし、平時も学校から持ち帰った端末、あるいは自宅のパソコンからシステムにアクセスしてちょっとした作業をすることもできない状態になっています。
先生の働きやすさや、教師になりたい若者が減っているという現状を考えると、非常に大きな問題です。クラウドが当たり前になった現在では、統合型より、むしろクラウドベースの非統合型のほうが望ましい。もちろんセキュリティー対策のために、通知表など機微情報へのアクセスだけは校内に制限するとか、すべてのデバイスやユーザーに対して強力な認証と認可を行うゼロトラストの考えでネットワークへアクセスする仕組みを構築することも必要になります。
こうしたことが「GIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議」で議論されており、22年8月に論点を整理した「中間まとめ」を発表しました。23年2月には最終報告が予定されています。これを基に23年以降、校務のDXが加速することになるでしょう。
それでも教師の意識や学校の姿勢に基づくICT格差は、これからさらに広がる可能性があります。公立校の場合、これをいかに是正していくのかは、1720近くある自治体がどれだけ本腰を入れるかどうかにかかっています。自治体の首長や教育長が若くてICTがよくわかっているところは、変わるのが早いと思います。そろそろ若い人の感覚に任せていくのが、これからの時代には必要なんじゃないですかね。
(文・田中弘美、撮影:尾形文繁)
東洋経済education × ICT編集部
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