「宿題」やめた岐阜小の校長、「学校と保護者の役割の整理を」と語る真意 狙いは「自ら学ぶ力の育成」と「働き方改革」

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また同校の児童が、「自分で決められる」「得意なことが伸ばせる」「苦手なことに取り組める」などの宿題がなくなったメリットを伝え、「漢字ドリルや計算ドリルでテスト勉強」「親子で選んだ問題集」「習い事の勉強」などに加えて「朝食や昼食作り」「給食のナプキンや袋作り」「タブレット端末でアニメーション作り」なども紹介すると、他校の児童は驚いていたという。

5年生は、定期的に家庭学習を見せ合う機会を設けている

「本校の周囲は豊かな自然や歴史、文化に恵まれており、地域から学ぶことが非常に多い。そのため学校でも『ふるさと共創教育』を進めており、今後は地域資源が家庭学習とも結び付いていくことを期待しています」

また、宿題を毎日見る必要がなくなったことで、「各担任は“追い立てられ感”がなくなり、給食もゆっくり食べられるようになったのではないか」と藤田氏は話す。ただ、課題もある。

「本校は、全学年2学級(1学級約25名)の編成です。新たな挑戦をしやすい規模であり、当初から宿題廃止に前向きな教員は多かったのですが、一方で自分のやり方を否定されたような気持ちになった教員もいました。教員の意識改革は、今後も課題だと感じています」

「学校・保護者・地域の役割」を整理する時期にきている

宿題廃止は、どの学校でもできるのだろうか。重要なポイントについて、藤田氏はこう語る。

「どんな子どもを育てたいのか、どんな力を身に付けさせたいのかを教員同士で共有すること。保護者には、先生が決して楽をしようとしているわけではなく、宿題を見るよりも児童に目を向け寄り添うことが大切であることを理解してもらうこと。この2つがそろえば、不安の声があっても反対の声は出てこないと思います」

そのためにも、丁寧に話を進める必要はあるが、最も大事なことは理念をぶれずに語り続けることだという。「本校の場合、PTA会長や学校運営協議会会長が大きな力になってくれました。校長が本気を出せば味方してくださる方々は出てきます」と、藤田氏。また、保護者の自覚を促すことも大切だと語る。

「保護者の責任として、わが子の学習状況や学力はきちんと見届ける必要があると考えています。学校が先回りして補習を行うのではなく、問題があったら家庭が心配して学校に相談するというのが本来のあり方ではないでしょうか。まず家庭がどうしたいのか、考えてほしいと思っています。この先、教員の働き方改革の面からも、学校と保護者の役割を整理する必要があるでしょう」

藤田氏はさらに、「地域も含めて大人の役割を見直す必要がある」と強調する。現在、多くの学校で家庭や地域とのつながりが希薄だといわれるが、地域と一体となって教育活動を行う同校でも、コロナ禍で危機感が募ったという。

「例えば本校では、これまで下校の引率はコミュニティ・スクールの方々が協力してくれていましたが、高齢の方が多くコロナ禍で見守りができなくなりました。このとき本校は、保護者に協力を求めました。交通安全指導は学校の仕事ですが、通学の見届けは家庭の責任と考えるからです。教育現場は宿題の問題に限らず、子どもたちを大事に育てるには何をすべきなのかという視点で、大人たちの役割を整理する時期にきているのではないでしょうか」

(文:國貞文隆、編集部 佐藤ちひろ、写真と資料:岐阜市立岐阜小学校提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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