物が売れない時代でも、リユース(中古品)市場は伸び続けている。中でも活況を呈しているのが国産ギター。中古楽器に力を入れるリユース会社が増えている。
中古ギターが高騰している。中でも脚光を浴びているのが、1970~80年代の国産エレキギター。これらは「ジャパンビンテージ」と呼ばれ、当時の販売価格を上回って取引されている。新品よりも高値で取引されるギターも少なくない。
例えば1980年代前半のフェンダージャパンのギターの場合、「5年前に5万円だったものが15万円。10万円だったものは30万円で売られている」(ハードオフ楽器スタジオ吉祥寺店の大原誠店長)。主に中高年層が、当時買えなかった懐かしさから購入に至るケースが多い。巣ごもり需要も影響し、中古ギターの取り扱い価格は上昇傾向にある。
ジャパンビンテージ人気の火付け役は、海外のギターファンだ。1990年代に日本のギターメーカーがアジア各国へ製造委託するようになると、質の違いが指摘されるようになった。
20年前からメイドインジャパンのギターがよかったという風潮が高まり始め、「GRECO」「TOKAI」「TESCO」「YAMAHA」をはじめとする複数のブランドが人気を集めている。
10年前から中古楽器を中心に扱うGRACEの沢村優太代表は「メイドインジャパンの製品は海外で熱望されている」と語る。同社は売上高の35%を海外向けが占めており、「欧米では日本のものづくりが世界一、日本のギターが優れていると考えている人たちがいる」(沢村代表)。今後はさらに海外売上高比率を引き上げていく方針だ。
コピーモデルが本物を脅かす
1950年代から普及し始めたエレキギターは、ビートルズなどのロックスターと足並みを揃えるように人気を高めていった。
日本では1970年代に入ると、アメリカの大手ギターメーカーのフェンダーやギブソンが発売している人気モデルの模倣品が大量に出回るようになった。最初こそ粗悪品も散見されたが、めきめきと生産技術を向上させて、良質な木材を使ったギターを製造できるようになった。
コピーモデルの中でも神田商会のGRECOや東海楽器製造のTOKAIなどは、本物の販売に影響が及ぶほど人気を集めた。しかし東海楽器は1984年にフェンダーから偽造品製造をしていると訴訟され、裁判所から販売停止を言い渡された。神田商会はギブソンから訴訟され、1980年代から販売を縮小させている。そのほかにも多くのギターメーカーが淘汰されていった。
高品質なギターを量産した当時のイメージは欧米のギターファンの間で色濃く残っている。日本でもジャパンビンテージのギターは高騰しているが、欧米では入手困難ゆえに日本よりも平均で2~4倍の価格で取引されている。「海外のコアな顧客が狙っているモデルなら、国内なら1万円で取引されているギターが10万円になる場合もある」(GRACE楽器事業部の西薗樹事業部長)。
年月を経るほど希少性が増すため、投資目的で入手に動くコレクターも少なくない。人気も価格もうなぎ登りだ。
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