18年間「公立・塾なし・留学経験ゼロ」でハーバード入学させた母が語る、子育てと学習法 世界中「どこでも活躍できる」子どもの育て方
子どもに「無条件の愛」を示すが「期待はしない」
ただ、得てして親の思いは子どもに届かないことが少なくない。親の思いが押し付けとなり、ときには子どもに過度な負担を与えてしまう場合もあるが、そういったことはなかったのだろうか。
「そうならないために大事なことが、コミュニケーションと人間関係です。何かを押し付けるのは相手に“期待しすぎている”から。だから、がっかりするのです。私は“自分”には期待しますが、“相手”にはそんなに期待しません。恋愛でも何でも、失敗の原因は“期待しすぎる”ことです。子どもが世界のどこでも生きていけるように、私は種まきはしますが、それを受け取るかどうかは子ども次第。そのとき重要になってくるのが、コミュニケーションの仕方なのです。どんなときでも、親は“無条件の愛”を示し続ける。そして、自分に厳しく、子どもを100%信じ続けること。教育で失敗するのは子どもを疑って、不安にさせるからです。親が不安になれば、子どももそれを感じ取り不安になります。そうならないためにも、子どもを微塵も疑わないことが大事なのです」

真理さんから見て、すみれさんはどんな子どもに見えていたのだろう。
「かわいかったですよ(笑)。そうですね……、体力があって、いつもニコニコしている一方で、継続力があり、耳がいいという子どもに思えました」
耳がいいというエピソードでは、こんなものがあるという。
「家は音楽好きだったので、いつもすてきな音楽を流していました。音楽を聴いて、さりげなくその楽譜を置いておく。そうすると、すみれが『その曲を(バイオリンで)弾いてみたい、弾いてみよう』と、バイオリンを弾き始める、そんなこともありましたね。また、よく外国人のお友達を招いてホームパーティーをしていたのですが、生まれたときから日本語、英語、フランス語の3カ国語で話しかけていたからか、すみれは日本語が通じないときは英語で話しかけていました。3歳ごろからバイオリンを始めたのですが、その頃には、英語の本も読めるようになっていました。結果として4歳で英検3級にも合格しましたね」

そう語る真理さんだが、不思議と“教育ママ”の印象はない。あくまで、自分と子どもの好きなことをしたり、させていたら自然に子どもが伸びた、というあっけらかんとした印象なのだ。
子育てにおいて、感覚的に幼少時代は早く過ぎ、子どもと密に過ごすことができるのは中学生の頃まで。もし親がこんなことを教えたい、あんなことを学んでほしいと思っていても、時はあっという間に過ぎてしまう。だからこそ、明日よりも今日。思いついた瞬間から、愛情を込めて、結果を期待しすぎず、こうなったらいいなあという方向に子どもを向かわせることが必要だと真理さんは続ける。
「ハーバード合格は、あくまで結果。合格すること自体を目標にするべきではないと思います。すみれの場合は、音楽と学問を両立したい、外国の友達と一緒になって演奏したい、自分で曲を作ってみんなに伝えたい。そう思っていたところに、合格通知が届いた。ですから、ハーバードの校風に合った子どもに自然とオファーが来るものだと感じます」
そう語る真理さんは、社会に出てチャレンジを続けるすみれさんにこれからどうなってほしいと思っているのか。
「いや、もう幸せになってほしいという以外ないですね。とくに何かになってほしいという期待はありません。子どもが巣立った後は、むしろ“私自身”の伸びしろに期待しています(笑)。すみれがハーバードに入学した年に、私は英語塾とサマースクールで起業しましたが、講師や生徒さんなど、日本だけではなく、欧米やアジア諸国の若い人に会うことが多くなりました。社会の変化が激しい今、私自身もその変化に対応しながら、少しずつステップアップしていきたいと考えています。そのとき大切なことは、とにかく行動すること、そして変化の一歩前に行くことだと思っています」