道徳的な社会を築くために「合理性」の発揮を 合理性、大東亜共栄圏、疲れない脳など書評8冊

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ブックレビュー「今週の7冊」

 

[Book Review 今週のラインナップ]

・『人はどこまで合理的か』

・『大東亜共栄圏 帝国日本のアジア支配構想』

・『5人の名医が脳神経を徹底的に研究してわかった 究極の疲れない脳』

[新書紹介 3分で4冊!サミングアップ]

・『自民党の魔力』

・『私の文学史』

・『いまを生きる カント倫理学』

・『天変地異の地球学』

『人はどこまで合理的か』スティーブン・ピンカー 著
『人はどこまで合理的か』スティーブン・ピンカー 著、橘 明美 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

評者・北海道大学教授 橋本 努

新型コロナの感染拡大とともに、米国ではバカげた陰謀論があふれ出した。中国で開発された生物兵器であるとか、ファウチ(米国立アレルギー・感染症研究所所長)はがっぽり儲けようとしているといったデマである。

トランプ大統領の対応も非合理的で、コロナ感染症は奇跡のように消えるとか、漂白剤を注射といった根拠のない治療法を提案したりもした。結果として米国では1億人近い感染者、100万人を超える死者を記録した。

どうして米国ではフェイクニュースがまん延するのか。本書は社会の劣化に抗して、合理的思考の大切さを説いたスリリングな教養書である。

合理性で道徳的な社会を 現代啓蒙主義の快著

陰謀論が幅を利かせる背景には、「人間は非合理的」と説く知の最前線での研究がある。認知心理学、確率論、ゲーム理論などでは、いかんともしがたい人間の非合理性に関心が集まっている。例えばフレーミング効果やアンカリング効果など、合理的な人でも陥りやすい非合理的な思考枠組みがあるとされる。しかし、著者はこうした考えに批判的で、私たちはもっと合理的になりうるとシンプルに主張する。

むろん進化論的にみるなら、私たちの祖先は陰謀によって命を落とす機会もたくさんあったのだから、陰謀論を信じる理由は十分にある。著者もこの点には同意したうえで、それでも人類はもっと合理的な方向に進化すると期待する。

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