熊本県立高森高校「公立初・マンガ学科」新設に注目集まる、その舞台裏とは? 官民連携、地域が一体となった学校づくりとは?

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「教育委員会から正式なゴーサインが出ていないため、私と教頭の2人だけで水面下で動いていたのですが、町のオファーに対して返事もできず、つらい日々を過ごしました。しかし、これではらちが明かない。そこで決断したのです。ほかの先生方に学科改編の必要性を説明し、共通理解を図って、協力を仰ぐことで、教員一体となってマンガ学科をつくろうと。プロジェクトとして動き出すことを決めました」

官民連携による、強力なバックアップ体制

早速、山中校長らは、マンガ学科を新設することを草村町長に伝えた。そこからの町長の行動力はすごかったという。

「町長も熊本県教育委員会に、マンガ学科設置を継続して働きかけていました。その熱意が実り、コアミックス、高森町、県教育委員会、高森高校の4者協定を結ぶことになりました。それが2021年9月のことでした」

4者協定の様子。写真左から、熊本県教育委員会教育長・古閑陽一氏、高森町町長・草村大成氏、熊本コアミックス代表取締役社長・持田修一氏、高森高校校長・山中圭介氏

この4者協定を結んだことが後に幸いする。県教育委員会をはじめ、各方面を説得する際、この4者協定が根拠となって折衝がスムーズに進むことになったのだ。その結果、22年3月、ついにゴーサインが出ることになった。そして同時に普通科を地域の探究学習に重点を置いた「普通科グローカル探究コース」(定員40人)に改編することも決まった。

こうして23年4月からスタートすることになったマンガ学科の定員は40人。プロの漫画家を目指す子どもたちをはじめ、将来漫画関連産業で働きたい子どもたちに対し、コアミックスの協力の下、実際にプロの漫画家や編集者らが指導する形を取る。漫画制作の機材や通信インフラも用意する。生徒は全国から募集する方針だ。そのため現在、町役場のプロジェクトチームが中心となって、学生寮など住環境の整備が進められている。

今年7月にはオープンスクールが開かれた。漫画家を目指す中学生たちが全国から集まり、漫画編集者らの授業を受けた。山中校長がそのときの印象をこう語る。

オープンスクール参加者130名のうち、およそ8割が「マンガ学科」志望だったという

「参加した子どもたちは自分がやりたいことができると目をキラキラとさせていました。マンガ学科に絶対に入学してみたいという熱意を抱いた子どもたちがほとんどだったのではないでしょうか。保護者も地元や出版社のバックアップがすごいと学校の印象を変えられた方が多かったと感じています」

来年、マンガ学科の新設で新たなスタートを切る高森高校。山中校長は熱意ある言葉で次のように今後の抱負を語ってくれた。

「高森高校に入って、新たな道を切り開いてほしいですね。マンガ学科では漫画家や編集者など漫画の夢を実現させた先生たちが教壇に立ちます。そんな成功した人たちが近くにいるからこそ、学べるものがあるはずです。プロの漫画家になりたい、漫画関連の仕事をしたいという子どもたちはぜひ高森高校を目指してほしい。そして、将来漫画を通じて世の中に貢献できる力を、マンガ学科で身に付けてほしいと思っています」

(文:國貞文隆、注記のない写真:すべて高森高校提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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