運の尽き?「国葬」新味ない首相答弁が深めた危機 低姿勢で説明したが、内容は従来の繰り返し

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その中で、岸田首相は今回の国葬実施について、「国の儀式」を内閣府の所掌事務と定めた内閣府設置法を法的根拠として閣議決定したと説明。多くの国民が問題視している全額国費となる国葬経費についても、警備費なども含めた約16億6000万円の経費概算を示したうえで「適切な対応」と繰り返した。

閉会中審査での岸田首相の一連の説明について、野党第1党の党首として質疑を行った泉氏は質疑終了後記者団に「(世論は)納得していないと思う。まだ説明責任を果たしていないことは明らかだ」と厳しく批判した。

泉氏ら野党側は、吉田茂元首相や佐藤栄作元首相の葬儀開催では、当時の政権が野党の意向も重視して対応したことを挙げ、今回の政府・自民党だけの判断となった点を繰り返し追及。泉氏は国葬の開催理由について「あくまで岸田内閣のお手盛りの理由でしかない」と指摘したが、岸田首相は従来の見解を繰り返すだけだった。

こうした岸田首相の対応に、他野党も「言葉遣いは丁寧だが、説明責任を尽くしていない」(社民党・福島瑞穂党首)、「国葬を強行する理由を一切まともに答えなかった。『憲政史上最長』などは理由にならない」(共産党・志位和夫委員長)と批判のオンパレード。

国葬には理解を示している国民民主党・玉木雄一郎代表も「国葬を決定したときに(国会審議を)行っていればよかった」と指摘。このため国葬について改めて閉会中審査の実施を求める声も出たが、与党は応じない構えで、次の国会論争は国葬後の臨時国会になる公算が強まっている。

こうした状況に、岸田首相周辺からは「あとは粛々と準備を進め、国葬を成功させれば国民の受け止め方も変わる」(官邸筋)と楽観する声も出る。しかし与党内では「首相の説明を聞いて、どれだけの国民が国葬の意義などを理解したかは疑問」(閣僚経験者)と首をかしげる向きが多い。

直後に旧統一教会との接点に関する点検結果を公表

しかも、閉会中審査の直後に自民党が旧統一教会と各所属議員の関わりについての点検結果を発表したことにも野党側が反発。安住淳・立憲民主国対委員長は「ニュースを山盛りに出して、自分たちのニュースを小さく扱ってもらう。いかにも自民党執行部の考えそうな、せこいやり方だ」と皮肉った。

自民党の茂木敏充幹事長が8日午後5時過ぎに発表した「点検結果」によると、党所属国会議員379人の半数近くの179人が旧統一教会や関連団体と何らかの接点があったとされる。ただ茂木氏は、このうち萩生田光一政調会長や山際大志郎経済再生担当相ら121人の氏名を公表したが、全面公表は避けたため、与党内でも「疑心暗鬼が広がるだけ」との声も出る。

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