「ノルドストリーム・ショック」でユーロ安が進む 欧州のスタグフレーションが近づいている

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9月2日、ロシアがノルドストリーム1による欧州向けの天然ガス供給について、再開延期を通告しており、欧州のインフレはいっそう厳しいものになりそうだ。9月8日のECB(欧州中央銀行)政策理事会では、0.75%ポイントの利上げが決定された。

ガスプロムはノルドストリーム1での欧州への天然ガス供給再開の延期を発表(写真:Bloomberg)

急速な円安が耳目を集めているが、その少し前からユーロの急落も注目されている。ユーロの対ドル相場はこのところ、2002年以来、約20年ぶりに0.99を断続的に割り込んでいる。

理由は複数挙げられるが、やはり大きかったのは、9月2日にロシア国営の天然ガス会社ガスプロムが、欧州向けガスパイプライン「ノルドストリーム1」での供給再開を当面延期すると発表したことであろう。もともとガスプロムは送ガス用タービンの定期的な保守・修理を理由に、8月31日から9月2日までの3日間、ノルドストリーム1でのガス供給を停止していた。延期の理由はタービンの電気回線接続部分で「油漏れ」が見つかったためといわれているが、タービン運転との因果関係は定かではない。

表向きはそうした機器不調が理由としても、一連の決定は同日(9月2日)に主要7カ国(G7)の財務相がロシア産石油の輸入価格に関して今年12月以降に上限を設定すると決定したことに対するロシア側の対抗措置であると指摘する向きが多い。

現実化しつつある欧州の「悪化シナリオ」

12月5日以降、上限価格を超えるロシア産石油の海上輸送に関しては保険会社による保険サービスの提供が禁じられるため、ロシアにとっては事実上、一定価格以上の原油が禁輸の憂き目に遭うことを意味する。

石油が売れなければ戦費は枯渇し、軍事作戦も滞り、実体経済への対応に四苦八苦することになる。上限価格設定は今後、石油に限らず、天然ガスにも至る可能性が報じられており、そうなる前に供給を絞って外交的な駆け引きを試みようとするロシアの思惑が透けて見える。

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