不況、インフレ、そして、それらが同時に進むスタグフレーションが、ここ何カ月と話題を席巻するようになっている。だが、世の中に広がる悲観論の正当性は疑ってみる価値がありそうだ。2月5日号の本欄で警告したように、現在の経済環境が厳しいという認識は筆者も共有している。ただ、自身のそれまでの見解については、あれこれと点検を始めるようになった。理由は4つある。
不況シナリオ一色への違和感
まず、世の中が不況シナリオ一色になっている現状に驚かされたことだ。今ではほとんど誰もが、先進国は不況に向かいつつあるか、すでに不況入りしたと考えているように見える。これほど自信たっぷりに不況の到来が予期されたケースを、筆者はほかに知らない。
結局のところ「不況」がここまで恐れられているのは、普通はそれが予見できないという理由が大きい。景気予測は通常、実際に不況入りするまで景気後退を察知できないものだ。それにもかかわらず、今では一部の中央銀行(ずばりイングランド銀行=BOE)までもが、年内の景気後退入りを堂々と予測している。予測の精度が突如として上がったのか。それとも、別の何かが起きているのか。
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