「地政学」だけで説明できない台湾の半導体投資 投資決定の要因は多岐にわたるとの認識が必要
現在進む台湾の半導体メーカーの投資行動は、民間企業の合理的な判断を今一度振り返る材料を提供してくれている。
「台積電(TSMC)の精神は高雄の精神であり、高雄の価値は私たちが世界で不可欠な一部を作ることにある」
8月7日に台湾南部の最大都市、高雄にある楠梓産業園区で開かれたTSMC新工場建設の起工式で、陳其邁市長は高らかにそう語った。
世界で最先端の半導体技術を持つTSMCは石油会社・台湾中油の高雄製油所跡地に新工場を建てるほか、本社がある台湾北部の新竹市や南部サイエンスパークがある台南市などで10以上の半導体工場・施設の建設計画を進めている。中には2022年6月に生産計画を明らかにしたばかりの2ナノメートルの最先端半導体工場も含まれる。
半導体の「要塞」と化す台湾
南部サイエンスパーク内の広大な敷地でTSMCは圧倒的な存在感を放つ。グレーや白のバックに特徴的な赤のラインとロゴが入った外壁の建物や工場が建ち並ぶ。その隣では新たな工場の建設現場があり、そこを出入りする資材運搬トラックが道路を走り回っている。南部サイエンスパークでTSMCは4工場を完成させたばかりだが、さらに4工場を建設中だ。
「護国神山と呼ばれるわけだ」。立ち並ぶTSMCの建物群を見ていた60代の男性は感慨深げにつぶやいた。台湾の中央を南北に3000m級の山々で貫く中央山脈は台風の被害を防いでくれることから護国神山と呼ばれている。中国からの圧力が強まる中、外交カードとして使えることからTSMCは現地でその護国神山に例えられている。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
東洋経済ID 会員特典
東洋経済IDにご登録いただくと、無料会員限定記事を閲覧できるほか、記事のブックマークや著者フォロー機能、キャンペーン応募などの会員限定機能や特典をご利用いただけます。
東洋経済IDについての詳細はこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら