みずほとソフトバンク、「情報銀行」の2つの誤算 個人の信用をスコア化する野心はなぜ躓いたか

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みずほとソフトバンクの合弁会社が苦境に立たされている。国内初のフィンテックサービスが軌道に乗らない理由はどこにあるのか。

2016年の記者会見ではみずほ・ソフトバンクの両グループトップが登壇し、華華しいデビューを飾ったJスコア(撮影:大澤誠)

6月末、ある企業の決算公告が業界紙にひっそりと掲載された。2022年3月期決算では15億円の最終赤字を計上。バランスシートは負債199億円に対して純資産はわずか5億円と債務超過寸前だ。懐事情が苦しい企業の正体は、みずほ銀行とソフトバンクが設立した「J.Score」(Jスコア)だ。

2016年11月に設立されたJスコアは、フィンテックを活用した個人向け融資を手がける。AIを用いた独自の審査技術を武器に、金融機関の審査が通らない個人に対しても、低い貸し倒れリスクで融資を行うことが特徴だ。設立に先立つ記者会見ではみずほ・ソフトバンク両グループのトップが登壇し、旧来のリテール業務に風穴を開ける画期的なビジネスだと印象づけた。

だが、当初の期待とは裏腹に、Jスコアは6期連続で最終赤字を計上。累積赤字は2022年3月末時点で200億円を超えた。当初抱いた野望に対して2つの誤算が生じ、Jスコアはいまだ足踏みを続けている。

貸し出しの範囲を広げたい

「今までとはまったく違う、レンディングの世界を作りたい」。2016年9月、Jスコアの設立に先立ち行われた記者会見。みずほフィナンシャルグループの佐藤康博社長(当時)は、Jスコアの革新性をそう力説した。同じく登壇したソフトバンクグループの孫正義社長も「このジョイントベンチャー(合弁事業)には非常に期待している」と熱弁していた。

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