プログラミング分野の「男女比8対2」の社会的損失、女子のIT教育に見えない壁 ジェンダーギャップ解消を図るには工夫が必要

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22年、2回目の開催となったガールズプログラミングフェス「KIKKAKE」。写真は「KIKKAKE」でプログラボによるイベント「回るケーキスタンドをプログラミングして動かそう」の様子

そもそもプログラミング教育に性別は関係ない。20年度に小学校でプログラミング教育が必修化され、21年度から中学校でも内容が拡充、22年度からは高等学校で「情報I」が共通必履修科目となり、25年1月からいよいよ大学入学共通テストでプログラミングを含む「情報」が出題される運びになっている。

この小中高の段階を通じてプログラミング教育を充実させる狙いは、 ICT を日常的に活用することが当たり前で、かつ将来の予測が難しい社会において、生きていくために必要となる資質・能力、つまり情報や情報技術を手段として主体的に活用する力を育むことにある。

「10年後、20年後はITエンジニアでない職種でも、ITリテラシーがあることが前提の社会。そのとき、今の子どもたちがいきいきと活躍するためには、新しい知識や概念を柔軟に吸収できる小中高の段階で、プログラミング教育における成功体験を重ね、自分にもできるのだという自己肯定感を育んでいくことが大切なのです」(谷口氏)

しかも、今後は少子高齢の加速化、生産年齢人口の減少によって、労働力の不足や公共サービスの低下などが懸念されている。経済社会水準の維持のために、ICT、AI、ロボットなどの活用は不可欠で、IT業界を担う人材不足は日本社会の根底を揺るがす一大事だ。

IT人材の不足に関しては、経済産業省の「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査」(16年6月)で試算した「30年に最大で約 79 万人」という数字がよく引用される。しかし、IT人材を必要とするのは、もはやIT業界だけにとどまらない。

「すべての企業でIT化、DX化が進む今、あらゆる業界でITエンジニアが不足しており、需給ギャップは今後さらに拡大するでしょう。ITエンジニアは男女ともに活躍できる職業です。それなのに、ITエンジニアという職業を選択する女性が少ない、採用する側も結果として男性に偏ってしまうのは、社会にとって大きな損失です」(沼田氏)

女性エンジニア不足が、社会的不利益を及ぼす例は枚挙にいとまがない。有名な話として知られるのは、自動車の設計開発だ。今でこそ自動車メーカーは女性を考慮したものづくりを行っており、衝突安全テストには小柄な女性や妊婦のダミー人形も用いるが、かつては平均的な男性の体格に基づくものだけだったという。

また、最近では企業が採用にAIを導入するケースが増えている。だが、いち早くこのAI採用を導入した米国の巨大テック企業は、これを18年に打ち切った。過去10年間の履歴書のパターンを学習させた結果、男性データのインプットが多くなり、ソフト開発など技術関係の職種採用ではシステムに女性を差別する機械学習の欠陥があることが判明したからだ。

無意識のうちに生じるものの見方、捉え方の偏りは、社会の至る所にある。これに気づき、商品・サービスの質の改善・向上を図っていくためにも、これまでマイノリティーだった女性が開発側に進出する必要がある。「エンジニアの領域で活躍する女性が増えることで、モノづくりの多様性が高まり、私たちの暮らしがもっと快適に、幸せなものになるはず」(谷口氏)だ。

プログラミング教育市場1000億円達成のカギは女子対策

今回の「KIKKAKE」は前回に比べ、イベントページの作りを全体的にカラフルにし、ワークショップのタイトルに「プログラミング」という言葉や、ロボットなどのメカニカルなイメージの強いアイキャッチ画像をできるだけ使わないなどの工夫をしたそうだ。

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