高知の教員「のざたん」が学校外に「子どもが無料で学べる場」をつくる訳 「会いに行けるセンセイ」が語る地方の教育課題

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子どもが安心して学べる場をつくろうと思った理由とは?

野崎氏は、実は高知県出身ではない。大学卒業後、教員としてのキャリアをスタート。その後、転職して大手教育企業の教室事業のリーダーとして従事したが、働きすぎて体調を崩す。のんびりしたいと、横浜市から妻の出身地である高知県に移住した。

そこで改めて教員の仕事を始め、現在の学校で4校目。2019年には経済産業省「未来の教室実証事業」のHero Makersに参加。ほかにも高知県内の教育者と社会人とをつなぐコミュニティー「Tosa Educator's Guild(TEG)」を設立するなど多彩な活動に携わっている。そんな中、会いに行けるセンセイを始めたわけだが、ある課題が見えてきた。

会いに行けるセンセイとして、学校の枠を超えて高校生にワークショップを提供したり(左)、生徒や学生向けに教員のあり方などを紹介したり、さまざまなイベントにも従事(右)

「高知県は人とのつながりが見える程よい規模感で、とても居心地がいい。一方、都会とは違った形で、学校という空間を息苦しく感じてストレスをためてしまう子どももいます。地方の子は隣の学校の子と話す機会もほとんどありませんし、いろいろなものが見えすぎてしまう学校空間に違和感を抱くなどしてあぶれてしまうと、行き場を失ってしまいがち。そんな子どもをサポートできるクッションが地方にはないと感じます」

野崎氏は今、会いに行けるセンセイの活動から拾い上げた、こうした地方の教育課題を解決しようと、企業経営者や大学生の有志らと共に、小中高生と大学生が無料で利用できる「高知の子どもの学びを支える場」をつくり始めている。運営母体である一般社団法人ハンズオンを共同代表として3月に立ち上げ、まずは子どもも大人も一緒に使えるコワーキングスペースの運営を4月からスタートさせた。

運営するコワーキングスペース「Kochi Startup BASE」は以前から野崎氏自身もイベントで利用していた場だ(左)。子どもたちがテクノロジーを身近に感じられるように遠隔コミュニケーションシステム「窓」を導入(右)

「まずは大人と子どもが同じ空間に存在できる場をつくりたいと思っています。都会ではカフェなどで商談しているおじさんたちの隣で、高校生が勉強しているような光景を見かけますが、それが地方ではほとんどありません。大人の世界と子どもの世界が完全に分かれてしまっているので、誰もが一緒に安心して学びに向き合える、その楽しさを肌で感じることのできるような場にしていきたいと考えています」

運営費や子どもたちの活動費は大人の利用者や法人会員の利用料で賄い、クラウドファンディングで集めた資金は、子どもたちに無料で貸し出すパソコンやオンライン環境の整備、パンフレットやノベルティーの作製などに充てる。現在は、有志の大学生が中心となって運営やイベント企画などを担当しているが、ゆくゆくは中高生が主催のイベント開催や、協賛企業との連携の可能性も探っていく方針だ。

野崎氏は、問題解決やチーム形成を目的に企業なども採用する「レゴシリアスプレイ」のメソッドと教材を活用する資格を有しており、4月末には「2022年度の学びの目標」をテーマに自分自身と向き合うワークショップを開催
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