「スタンフォード大学院」合格、27歳・元千葉県公立中学校教師の野望とは一体 若手教員は、なぜ米国教育大学院を目指したか?

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本格的な留学準備を開始したのは今から1年少し前の2021年4月。教員をしながら勉強する時間を確保するため、まず生活習慣を変えることから始めた。仕事を終え帰宅後は午後9時半に就寝。朝4時に起きて出勤まで勉強した。少ない時間で効率性、生産性を高めるためにきちんと睡眠時間を確保し、瞑想や運動する時間も設けた。SNSとアルコールは禁止、チョコよりもナッツを選ぶなど、健康にも気を使った。

英語については大学時代に米国に留学し、ある程度の素地はあったが、そこからもう一段階レベルアップする努力をした。大学院留学に必要なGREはコロナ禍で免除になった。大学の学部時代の成績は普通だったが、留学時の成績は非常によかった。フルブライト奨学金を取得できたのも、オンライン寺子屋をはじめとするこれまでの活動を総合的に評価されたことが大きいのでは、という。結果、最初にスタンフォード、次いでハーバード、コロンビアと立て続けに合格通知が届いた。

※米国にて大学院に進学するために必要とされるテスト

「自分の努力が報われたんだ、と思いました。1~2日はうれしくて、その余韻に浸っていました(笑)。当初はハーバードが第1志望だったのですが、プログラムの内容や、少人数教育であるところにひかれて最終的にスタンフォードを選ぶことにしました。スタンフォードで修士を終えた後、ハーバードに行くのもよいかもしれないと思っています。周りの人も自分が合格できるとは思っていなかったようです。そもそも受験方法が日本とは異なるので、自分でも本当に合格できるかどうか確信はありませんでした。しかし、何事も挑戦してみることが大事、そう思ってチャレンジしたことがよかったんだと思います」

合格したスタンフォードやハーバードには、直接足を運び見学してきた

若手教員から、教育界を変えていきたい

スタンフォードでは今秋から1年間教育大学院で学び、修士号を取得する予定だ。将来的には研究者になるというよりも、教育の実践の場で自分が学んだことを試してみたいと語る。そんな中村さんは今、オンライン寺小屋の取り組み以外に、若手教員から教育を変える「U29 Young Teachers Community」という組織も今年4月に発足させている。

「若い世代の教員たちの力を結集させて、何か新しいことをやってみたいとスタートさせました。自分もそうだったのですが、若い世代の教員は職員室で孤立してしまう場合も少なくないのです。せっかくよい意見や考えを持っているのに、なかなか上の人に意見を言えないまま、気づいたら前例踏襲を追認してしまっていることもあります。学校だけではない外のコミュニティをつくり、幅広く情報交換をすることで、さまざまな視点を持ち、柔軟な発想で今当たり前だとされていることを見直していければとU29の集まりをつくりました」

そんな若手教員を牽引する中村さんは、若手教員の視点から日本の教育現場には、どのような課題があると感じているのだろうか。

「こうでなければならない——そうした決まり事が多いように思います。例えば、卒業式は厳粛でなければならない。名簿は男女で分けなければいけない。新しいやり方を試すことがなかなか難しい、そんな雰囲気があるように感じます。それがもしかしたら教員だけでなく、生徒の思考も狭めているのだとしたら、それはあまりよくないでしょう。保守的であることが必要な場合もあるのですが、もっと柔軟に新しい考えを取り入れていくことで、教員を目指す若い世代も増えていくのではないかと感じています」

一般企業と比較できない、特殊な空間である「学校」

これは教員の世界だけの話ではない。大企業でも保守的で閉鎖的なところは少なくない。しかし、企業は倒産しそうになれば組織の見直しを始めるが、学校はそうではない。

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