コンピューターシステムをロックして「身代金」が支払われるまで使用不能にするランサムウェア(身代金要求型ウイルス)攻撃が続発し、暗号通貨(仮想通貨)の立場はかなり悪くなった。この手のサイバー犯罪に欠かせない道具になっている実態が広く知れ渡るようになったからだ。
今年5月には米石油パイプライン大手コロニアル・パイプラインがランサムウェア攻撃で操業停止に追い込まれ、同社がハッカー集団の身代金要求に応じて500万ドル(約5.5億円)をビットコインで支払うまで米東部のガソリン価格は上昇が続いた。より最近では、世界最大の食肉加工会社JBSもランサムウェア攻撃に見舞われている。「追跡の難しい匿名の暗号通貨は、脱税、犯罪、テロを助長する」との懸念は一部で以前から存在したが、そうした問題に光が当たるようになったわけだ。規制当局も永遠に手をこまぬいていられるわけではない。
暗号通貨は価値の貯蔵手段にすぎず無害だとする見解もあるが、これはあまりに浮世離れした議論といわなくてはならない。なるほど、暗号通貨は決済コストがかさむため一般の商取引に使われる可能性は低いだろう。それでも、中国やアルゼンチンが敷いているような厳格な資本規制から逃れたり、麻薬取引などで稼いだ違法な資金を洗浄したり、テロ組織などを対象にした米国の経済制裁をかいくぐったりしようともくろむ勢力からしてみれば、暗号通貨はまさにうってつけの決済手段だ。
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