制度設計ミスが価格高騰を招いた インタビュー/東京大学・松村敏弘教授

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まつむら・としひろ/東京工業大学大学院助教授などを経て、2008年から東京大学社会科学研究所教授。産業組織、公共経済学が専門。経済産業省の審議会委員として、容量市場の制度設計など電力システム改革の議論に関わる(記者撮影)

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東京大学社会科学研究所の松村敏弘教授は経済産業省・総合資源エネルギー調査会の制度検討作業部会委員として、容量市場の制度設計の議論に関わってきた。その過程で、今回の入札における価格高騰を招いた「経過措置」のあり方に警鐘を鳴らし、対案を示した。
だが、松村教授の主張は採用されず、恐れていた事態が現実になったという。容量市場の入札でなぜ異例の事態が生じたのか、松村教授に聞いた。

容量市場は必要不可欠ではない

――容量市場の必要性についてどう考えますか。

電力市場において、容量市場は絶対に必要不可欠なものではない。現にオーストラリアなどでは容量市場がなくても電力市場はきちんと機能しており、大きな問題は起きていない。では、容量市場がなかった場合に何が起きるのか。

「卸取引市場では、燃料代などの可変費しか回収できない。したがって容量市場がないと設備費用などの固定費が回収できなくなり、電源(発電設備)を新たに建設できず、既存の電源も退出せざるをえなくなる。発電事業は持続可能でなくなり、必然的に安定供給に支障をきたす」。このような主張をする人がいるが、100%間違っている。

卸電力取引所のように発電した電力量(キロワットアワー価値)を取引する市場において、固定費が賄えないような低価格が仮に続いたとすると、電源は維持できなくなって退出していく。そうなると電力の供給量が必然的に減るので、卸市場での電力価格が高騰する。電源の退出が止まる水準まで価格が高騰することになる。

すでに夏の猛暑日や厳冬期、大規模発電所の停止時などに卸市場の価格高騰が起きている。電源の退出がもし進めば、この回数は増える。この価格が急騰したときにこそ、発電事業者が多くの利益をあげる仕組みになっている。

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