有料会員限定

初の外遊を行った菅義偉首相の戦略外交 東南アジアと対中牽制、ロシアとも北方領土交渉で成果も

✎ 1〜 ✎ 279 ✎ 280 ✎ 281 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小

菅義偉氏が首相になって1カ月が過ぎたが、戦略的な外交を展開している。

とくに東南アジアとロシアで成果を上げている。菅首相は、初の外遊先としてベトナムとインドネシアを選んだ。これは戦略的によく練られた外交だ。

ところで、日本にとって米国は唯一の同盟国だ。日本が外国から攻撃されたとき、米国は自国が攻撃されたと見なして防衛してくれる。また、米国は世界で唯一の超大国だ。軍事面のみならず、基軸通貨のドルを発行している。日本の首相は就任すると、まず米国を訪問して同盟国としての絆を再確認するのが定石だ。しかし、現状では定石どおりの外交はできない。新型コロナウイルス感染を十分に封じ込めることができていない国への訪問は差し控えざるをえない。この観点から、米国、欧州、ロシアを訪れることは難しい。

さらに大統領選挙を11月3日に控えて、米国の内政はかなり混乱している。現状で訪米すれば、当然、トランプ大統領と会談することになる。トランプ氏は、菅首相との会談を選挙キャンペーンに最大限利用するだろう。これでトランプ氏が再選されれば、菅首相訪米は日本にプラスに作用する。しかし、民主党のバイデン氏が大統領に当選した場合、菅首相がトランプ氏に肩入れしたと受け止められると今後の日米関係に悪影響を与える。こういうときに、火中の栗を拾うようなリスクを取るべきではない。このようなことを考えたうえで、初の外遊先をベトナムとインドネシアにすることで、菅首相は独自の勢力均衡外交に着手できると考えたのであろう。

関連記事
トピックボードAD