
まとば・あきひろ 1952年生まれ。慶応大学大学院経済学研究科博士課程修了。専攻は社会史、社会思想史、マルクス学。『超訳「資本論」』『マルクスに誘われて』『カール・マルクス入門』など著書多数、訳書に『新訳 哲学の貧困』『新訳 初期マルクス』など。(撮影:尾形文繁)
19世紀中葉のフランスで社会主義思想家・活動家として活躍したピエール=ジョセフ・プルードン。彼の思想を、同時代を生きたカール・マルクスは徹底して批判した。だが、「マルクスに足りないものがプルードンにある」と、日本を代表するマルクス研究者がその思想を現在に問う。
ポスト資本主義で生きる、反国家・反権力思想
──ある意味、2人は同志でした。
19世紀に資本主義がもたらした民衆を従属させる社会に抗議して立ち上がったのは、マルクスら社会主義者、共産主義者という人たちです。当時の資本主義の下、生産性を上げた企業が経済活動から莫大な利潤を手にした一方で、その恩恵にあずかれない貧しい人々も多く生み出されました。
プルードンとマルクスは、資本主義の持つ不平等と人民を抑圧する権威主義をどう乗り越えるかという共通のゴールを目指していたのですが、その道筋で違いが生じ、マルクスがプルードンを批判するようになったのです。
──マルクスによるプルードン批判のポイントは?
1840年にプルードンが『所有とは何か』で行った「所有、それは盗みである」との主張に、マルクスは彼の共産主義への着想を得るほど共感しました。ところが、46年の『貧困の哲学』で、プルードンが「社会の矛盾は不安定な経済の不均衡にあり、それを正すことで矛盾はなくなる」と主張し、所有批判から転換したと考えたマルクスが反発、そこからプルードン批判が続けられました。
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