
まつもと・あきら●1947年生まれ。72年京都大学大学院農学研究科修了、伊藤忠商事入社。その後、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人社長やカルビー会長兼CEOを務める。2018年6月RIZAPグループ経営陣に参加。今年6月取締役を退任し特別顧問に就任。(撮影:今井康一)
昨年11月、RIZAPグループ(以下ライザップ)は新規買収の凍結を発表した。瀬戸健社長を「改心」させたのが、同年6月に経営陣に加わったばかりの松本晃氏だった。カルビー会長兼CEO(最高経営責任者)などを歴任し「プロ経営者」として知られる松本氏の目に、ライザップの買収戦略はどう映っていたのか。
──ライザップの問題とは何だったのでしょうか。
瀬戸さんが起業したときやボディーメイクジム開始時の「健康」という軸から、ちょっとずれた方向に向かっていた。その軌道修正が必要だった。瀬戸さんの抱く夢に沿ったM&A(合併・買収)であれば、正ののれんだろうが負ののれんだろうが、そんなことは問わない。だがいちばんの問題は、「こんな会社をつくりたい」というイメージに沿っていないと思われる企業の買収を続けていたことにあった。
──買収前の段階に問題の原因があったということでしょうか。
そういうことになる。加えて、右肩下がりの産業に属する企業を買っていた。厳しい業種なので「誰かが買ってくれるなら売りたい」と望む人のほうが多いと思う。よって銀行や証券会社、M&A仲介会社などを通じて、この会社(ライザップ)に売却案件が多く持ち込まれた。そういった企業の再建は、よほど優秀な人が行わないと難しい。
野球に例えると、時速100キロメートルのボールだったら素人でも打てる。でもこの会社が買ったのは、140キロメートルの速さで、しかもストンと落ちるフォークボールのような企業。打ち返すのは容易ではない。
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