規模追求モデルにこだわる銀行のままでは生き残れない。
「結局、自分の将来像を描けなかったから」
昨年夏に出会ったある30歳代の元銀行員に話を聞くと、そう口にした。彼は有名私立大学を卒業後、メガバンクの一角に入社。しかし、入社10年を過ぎて辞表を出した。
「法人営業を皮切りに、次は本部の企画部門、調査部門、最後は営業店の辞令を受けて、先行きが不安になった」と言う。彼が最後に抱いた心境が冒頭の言葉だった。銀行からは将来を嘱望されていた人材であったに違いない。少なくとも、出世という観点では周囲からそうとううらやましがられる異動パターンだからだ。
現場の懸命の努力が「お願いセールス」
だが彼には、一連の人事が「たらい回し」としか思えなかった。今、そう感じている若手銀行員は決して少なくない。
2~3年というサイクルでの転勤は、銀行員のシンボル的な人事制度として長らく踏襲されている。「顧客との癒着を防止する」「さまざまな経験を積ませる」等々、その意義が説かれてきたが、率直に言って、そのほとんどは前時代的な理屈と化している。
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