社長就任から10年間の約3650日の間で、『忘れられない日』、すなわち社長としての彼の原点を形成した1日こそが、2010年2月24日である──。
「公聴会は、俺を辞めさせるためのゲームだ」
大規模リコール問題について米下院公聴会で証言するため、豊田章男は同20日、社有のビジネスジェット機で渡米した。品質をめぐる米国からの批判の嵐を一身に受け止め、猛烈な孤独にさいなまれる中での悲壮な覚悟の旅立ちだった。
【大規模リコール問題】2009年から10年にかけて世界的に行われたトヨタ車の大量リコール。ブレーキシステムやアクセルペダルの不具合などで累計約1000万台がリコールや自主改修の対象となった。
米運輸省道路交通安全局は、トヨタ車の急加速による死者は00年以降34人と発表しており、彼は逮捕されるかもしれないという情報まで、米国から届いていた。
「日本に無事に帰れないかもしれない。クビを差し出さなければいけないだろう……。そう、もはや社長にとどまることはないだろう」
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