アリババなどネット企業の台頭とテクノロジーの進歩がもたらすのは利便性だけではない。新たな社会統治システムとして機能し始めている。

中国ネット通販最大手のアリババ集団が提供する電子決済サービス「支付宝(アリペイ)」について、日本上陸が報道されるなど、注目が集まっている。こうしたネット決済は、信用取引が浸透していない中国での取引コストを引き下げ、企業の生産性向上に寄与する役割を果たしてきた。
一方、海外メディアでは、中国でのネット決済の急速な浸透は、共産党の意を酌んだ大企業に個人情報を集中させ、「監視社会」化を加速するとして警鐘を鳴らす声も少なくない。ここではネット決済自体の是非を論じるのではなく、こういった現象がなぜ中国社会で、世界の最先端を行く形で起きているのかを考えてみたい。
このようなテクノロジーの進歩やそれを牽引する企業が、市民の「できること、できないこと」を決めていくという状況は、目新しいものではない。サイバー法などを専門とする米ハーバード大学教授のローレンス・レッシグは、15年以上前から『CODE─インターネットの合法・違法・プライバシー』などの著作で、テクノロジーの進歩が社会における規制のあり方をどのように変えていくのか、鋭い問題提起を行っていた。
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