国会では7月24〜25日に衆参両院の予算委員会で閉会中審査が開かれ、加計学園問題などで安倍晋三首相が厳しく追及された。各メディアの世論調査の内閣支持率も低下が続き、安倍政権は追い込まれている。安倍氏をめぐる一連の疑惑や閣僚の失言などが原因だが、少し視野を広げてみると、この政権が進めてきた経済産業省主導の政策がさまざまな点で軋轢(あつれき)を起こし、ダメージとなっていることがわかる。
「安倍政権の政策は経産省の関係者が牛耳ってきたが、彼らには長期ビジョンがない。その限界が露呈してきた」と語るのは、財務省の現職幹部である。
具体例を見てみよう。経産省出身で安倍首相の政務秘書官を務める今井尚哉氏は、いまや「官邸の主」と呼ばれる。2006年に発足した第1次安倍政権で首相事務秘書官を経験。第1次政権崩壊後も安倍氏との交流を重ねた。安倍氏の精神的支柱であり、政策面でも霞が関ににらみを利かせる。
今井氏は昨年のG7伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)で存在感を見せた。世界経済はリーマンショックの再来ともいえる危機的状況にあり、日本が消費税率を8%から10%に引き上げるのは誤りだという安倍氏の主張を演出。独自の資料を各国首脳にも配付して、議論をリードした。今井氏は17年4月に消費増税を予定していた財務省の反発を抑え込むことにも成功。結局、増税先送りを掲げた昨年の参院選で自民党は大勝した。しかし、リーマンショック級の経済停滞は、実際には起きていなかった。
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