構造改革の努力は十分になされているか
評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
かつて金融政策といえば、短期金利を操作し、長期金利や株価、為替レートに影響を与えて、マクロ経済や物価の安定を図る伝統的政策が主流だった。今では財政赤字の2倍もの長期国債を購入し、大量の上場投資信託(ETF)を買い付け、さらにマイナス金利を適用し、長期金利をゼロ%に誘導する非伝統的な政策が取られる。
ただ、伝統的政策といえども200年に満たない中央銀行の歴史の中で、この20年ほど主流だったに過ぎない。現状の政策が長引けば、非伝統的政策が新たな伝統と呼ばれる日が訪れる可能性がある。本書は、日本銀行が非伝統的政策を相次いで導入した2010〜15年に審議委員を務めた経済学者が、非伝統的政策について理論面を含めわかりやすく論じた好著だ。
量的緩和の効果に疑問を持つ人も少なくないが、本書は長期国債の大量購入を中心とする政策は、理論的にも実証的にも効果があったと論じる。評者もそれを認めるが、為替レートや株価などにばかり影響が表れ、実物経済や物価への効果は十分だったといえるか心もとない。将来、政策の手仕舞いの際に発生し得る大きなコストに見合うだけの成果といえるのだろうか。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
東洋経済ID 会員特典
東洋経済IDにご登録いただくと、無料会員限定記事を閲覧できるほか、記事のブックマークや著者フォロー機能、キャンペーン応募などの会員限定機能や特典をご利用いただけます。
東洋経済IDについての詳細はこちら