国立科学博物館人類史研究グループ長 海部陽介氏に聞く 『日本人はどこから来たのか?』を書いた

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5万年前、アフリカを起源に全世界へ拡散した現生人類、ホモ・サピエンス。アジアはヒマラヤの南と北を進み、東アジアで再び合流、3万8000年前、ついに日本へ上陸する。第一波は朝鮮半島から対馬を経て九州へ渡り、続いて台湾から沖縄へ、陸続きだった樺太から北海道へと、三つのルートでやってきた。日本人の祖先が旅した壮大な道のりを最新の研究結果とともに解き明かす本作。浮かび上がったのは、現代人の想像を超える、クリエーティビティに満ちた祖先たちの姿だ。

日本人はどこから来たのか?
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──ホモ・サピエンスの「海岸移住説」の否定から話は始まります。

これは、アジアでは南岸伝いにまず移住し、遅れて内陸に拡散したとする説で、欧米の研究者を中心に論じられ、受け入れられてきた説です。アイデアとしては面白いんだけど問題の多い説で、裏付けとなる証拠がない。それに、進化し新たな能力や創造性を備えたホモ・サピエンスが、2万年もの間、ただ海岸にへばりついていたとは考えづらい。

そこで各地の遺跡証拠を厳密に解釈し、確実なものだけをプロットしてみると、4万7000年くらい前に爆発的に遺跡が出現する。アジアでは最初から南北に同時拡散が起こっていて、全体的な傾向がクリアに説明できるようになったのです。

少し細かい話をすると、ホモ・サピエンスが世界に大拡散する過程で、ヨーロッパに移住したクロマニョン人は洞窟に壁画を残した。ところがアジアではそうした芸術作品があまり出てこない。では僕らの祖先は何をしていたんだろう、そこをきちんと考えたいという意識がずっとあったんですね。ヨーロッパの話は連中に任せといて、アジアのことはアジアを軸にきちんとやりたいと。

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