貧富の格差の拡大はイデオロギー闘争の結果
評者 東洋英和女学院大学副学長中岡 望
ピケティの『21世紀の資本』が世界的なベストセラーになるように、貧富の格差の拡大は世界的な関心事になっている。だが、この問題が出てきたのは1980年代である。サッチャー政権とレーガン政権が採用したネオリベラリズムの政策が膨大な貧富の格差をもたらした。
貧富の格差拡大を取り上げた書籍は数えきれないほど出版されてきた。その中で、本書は最も優れた分析を提供していると言っても過言ではない。著者は、ピュリッツァー賞を受賞した米国を代表するジャーナリストである。本書も過去の著作に勝るとも劣らない秀作であり、その分析は類書を圧倒している。
貧富の格差拡大は、イデオロギー闘争の結果である。歴史を鳥瞰すると、アダム・スミスに代表される古典派経済学をベースとする古典的リベラリズムの時代がある。初期資本主義の時代には、労働者は過酷な労働環境に置かれ、貧富の格差は当然視された。それを是正しようとして登場してきたのが進歩主義であり、その結実がニューディール・リベラリズムである。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待