スカイマークが世界へ 「A380」購入の賭け
新興エアラインの大勝負は、吉か凶か──。
大手の半額並みの運賃で展開するスカイマークは11月8日、仏エアバス社の最新鋭2階建て超大型機「A380」を6機購入し、2014年度をメドに欧米など海外主要路線の運航に参入すると発表した。
10月末には今期の営業利益を大幅増額し、前期比3倍増の91億円になると決算公表したばかり。低コスト運営を徹底しつつ国内線事業が損益分岐点を突破したため、かつての万年赤字がウソのように高収益企業へ急変貌中だ(今期売上高営業利益率予想は16%)。株価も7月末終値424円から足元は1000円前後まで上伸し、そんな中で次のステップへ大きく踏み出す“ビッグニュース”がベールを脱いだのである。
だが、発表から一夜明けると、スカイマーク株はつるべ落としのストップ安。その翌日も株価は大幅安を続け、スカイマークの野心は冷や水を浴びせられた格好だ。
株式市場では、資金調達に不安が集まった。A380のカタログ価格は1機約3・5億ドル(約280億円)。全日本空輸にA380購入を蹴られたエアバス社は、1年前からスカイマークに猛烈アタック。「カタログ価格より相当割安に提示されている」とスカイマーク幹部はしたり顔だ。だが、仮にカタログ価格の半額になったとしても、6機で締めて約840億円。スカイマークは今上期に57億円のフリーキャッシュフローを稼ぎ、9月末現金残高は123億円まで積み上げたが、全額現金での購入は難しい。
このため、増資による株式の希薄化が懸念され、株価下落の一因になった。しかしスカイマークは「購入資金の半額程度は欧州の輸出信用機関からの融資で手当てする」(幹部)方針。有利子負債の増加という面はあるものの、財務的な裏付けはあるようだ。
LCCモデルを逸脱
むしろ今後の不安材料は、いきなりA380を6機も買って、未知数の国際長距離線に参入するという事業計画そのものだ。無謀とは言わないまでも、あまりに大胆な内容だ。まず世界を見渡しても、格安航空会社(LCC)でA380を購入・予約したところは1社もない。LCCのビジネスモデルでは、百数十席の小型機で近距離路線を多頻度運航するのが鉄則。エアアジアX(マレーシア)とジェットスター航空(豪州)などが長距離国際線に参入しているが、それでも二百数十席クラスの中型機「A330」を主に使用している。