ボーク重子「安心して何度でも失敗できる環境」が子ども伸ばす理由 「レジリエンス」鍛え、主体的に挑戦できる子に

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テストの結果が1位であろうが10位であろうが、まず、“その子が大事な存在である”という事実に変わりはありません。それを頭の片隅に置いておいてください。テストで1位を取ったからすばらしいのではない。順位は単なる結果にすぎません。

子どもには、テストの順位や偏差値など、人が決めたランキングで子どもの存在価値が決まるのではなく、ただそこにいるだけで大切な存在である、という気持ちで接することで、子ども自身に自分を大事にする気持ち(=自尊感情)が生まれます。

そうした理由から、「1位だからすごいね!」と結果や順位を褒めるのではなく、プロセスを認めて、褒めてあげることが重要なのです。逆にテストで思うような成績が取れなかったとき、子どもを鼓舞するために誤った声がけをして、それが劣等感につながってしまっては意味がありません。

テストの結果や偏差値には、問題の出題傾向や、ほかの子の点数の取り方など、自分の努力だけではどうしようもないことが関わってきます。結果だけを見て一喜一憂するのではなく、「自分の頑張った結果がこれだ」ということを、まずは子ども自身に受け入れさせることが大切です。受験というのは、実は究極の自分軸を求められることでもあります。自分を他人軸で捉え、評価するのではなく、まず自分がどれだけ頑張ったかを考えること。そういう意味では、非認知能力を育むいい機会であるといえます。

「安心して何度でも失敗できる」環境をつくる

――思うような結果を得られないとき、子どもが失望しているとき、子どもにどういう声がけをしたらよいでしょうか?

人間は求める結果を得られなかったときに、別の幸せを見つけることができます。だからこそ前に進めるのです。レジリエンス能力の高い人は、困難や失敗を成功のきっかけとして捉える力、ポジティブな視点に変える力があります。

受験であれば、合格しなかった学校のことを考えるのはやめて、行くことになる学校のよさを、改めて子どもと話し合いましょう。そのためには、受験する学校を選ぶ際、志望順位にかかわらず、それぞれの学校の魅力を自分なりに見つけておくことも重要です。「望む結果は得られなかったけれど、行くことになったこの学校でも、こんな楽しそうなことがあるね」とポジティブな声がけをして、子どもが希望を見いだす手助けをしてください。

そして重要なのは、子どもが自分自身でするべき問題解決を、親やまわりの大人が代わりにしないこと。子どもは、絶望の淵から自分自身で折り合いをつけて、前に進んでいきます。落胆している子どもを大人が救済するのではなく、子どもが自分で解決していく姿を、そっと見守ってあげてください。

私の話ですが、娘のスカイが15歳のとき、バレエ「くるみ割り人形」の主役を決めるオーディションがありました。主役のクララを踊るのが、ずっと娘の夢でしたが、結果は落選。その日、娘は「今から泣くけど、何にも言わないでね」と言い残し、ずっと部屋に閉じこもっていました。親としてはつらいことですが、これは娘自身が解決するべき問題なので、私にできることは黙って娘を見守るのみでした。

子どもというのは、実はすごく強い存在です。大人にできることは、子どもの強さを信じて見守ること。それが子どもの非認知能力を育むことにつながります。大人が先回りして救済しないことで、子どもの「レジリエンス」(=回復力)が高まります。たとえ失敗したとしても、それでも人生は先に続いていくということに気づかせてあげてください。失敗を恐れると、子どもは失敗しない範囲でしか行動しなくなります。大人がすべきことは、安心して、何度でも失敗できる環境をつくってあげることです。

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