子どもの「興味開発」が幸せな人生の土台となる訳 価値観も変動する人生100年時代を生きるすべ

「外なる物差し」が陳腐化、「内なる物差し」が必要不可欠に
――人生100年時代を迎えた今、これから子どもたちがキャリアを築いていくうえで、どのような学びの姿勢が必要だと考えますか。

(写真:探究学舎提供)
従来型の受験や個人のスペックを高める「能力開発」を自動車の片輪とすれば、もう1つの片輪である「興味開発」が、これからは重要だと考えています。興味開発とは、自分の興味・関心、好きなこと、やりたいことをクリエートしていくことを指します。誰かに与えられるのではなく、自分で内発的に創造していく力を養うこと。そういった学習プロセスが能力開発と並んで今、必要なのです。「能力開発」と「興味開発」の両輪があれば、どんな時代になっても自分で納得した人生のキャリアを切り開いていくことができる。それが現代的な意味での「幸せに生きること」につながっていくと考えています。
――この「興味開発」が、キャリア形成にどう生きるのでしょうか。
結論から言えば、人生を生きていくうえで「外なる物差し」と「内なる物差し」があり、とくに「内なる物差し」を満たす仕事に取り組んでいく、取り組み続けることが大事だと考えています。「外なる物差し」とは、収入や地位、名誉など世間的な成功を満たすものです。ただ実際には、その先に自分の心を豊かに満たしてくれるものはないということを、多くの大人はすでにこれまでの経験で知っているはずです。
一方、「内なる物差し」とは自分の主観的な意味での物事に対する評価であり、価値観や人生観といってもいいかもしれません。哲学的にいえば、「外なる物差し」は「持つ様式」であり、「内なる物差し」は「ある様式」ということになります。この「ある様式」を英語で言えば、「being(ビーイング)」ということになり、「ウェルビーイング」「ヒューマンビーイング」という最近重視されるようになった言葉でもわかるように、人間にとって最も重要なものなのです。
歴史的に見ると、資本主義社会では「外なる物差し」が強調されやすく、そのため、これまでは世間的な成功こそが幸福だという思い込みがありました。しかし、そこを求めるあまり「内なる物差し」を人々はおざなりにしてきたのです。
――人生100年時代という歴史上まれに見る長寿社会を迎えようとしている今、「外なる物差し」は陳腐化し、人はより「内なる物差し」に向かっているということでしょうか。