子どもの「興味開発」が幸せな人生の土台となる訳 価値観も変動する人生100年時代を生きるすべ
そうです。100年という時間軸を生きるということは、人が一度の人生の中で、さまざまな変化に遭遇することを意味します。しかし、さまざまな変化によって「外なる物差し」は、どんどん変わっていく。つまり、「外なる物差し」ばかりに頼っていては、どこかで行き詰まってしまうのです。だからこそ、どんな変化に遭遇しても耐えうる「内なる物差し」という自分の軸を持って生きていくことが必要不可欠になっているといえるのです。
子どもの頃から内発的欲求による学習体験を
――これからの社会は、どんな変化が起こるとみていますか。
国家や企業が主役の時代から、個人が主役となる時代が来ると考えています。それはITやインターネットをはじめとした情報革命によって、個人単位で簡単に物やサービスのやり取りができるようになり、個人が国家や企業といった組織を超えて、移動したり、つながったりできるようになったことが大きい。企業に所属しなくても、フリーランスとして仕事をつくる、個人が所得を得るというハードルがものすごく下がっているのです。
これから、このハードルはさらに下がっていきます。実際、コロナ禍によって、個人が働きやすいように企業は環境を整えていくという考え方が一般化し始めています。そうしたことに対する感度が低い企業は、今後淘汰されていく。それだけ今は、個人が強くなっているのです。今の時代を生きる人々の多くが、自由に個人の願望や期待をかなえていく未来を希求しているといえるでしょう。
――では、こうした社会を生きていくうえで、子どもたちはどんな力を身に付けていけばいいのでしょうか。
それこそ、好きなものを探究していく力だと考えています。そして、その力を育むものこそ「興味開発」なのです。では、どのように開発していけばいいのか。
例えば、子どもにとって、勉強は必要だが退屈なもの、ゲームは不必要だけど楽しいものだと思っているとすると、これからは「勉強する=事実に触れる、真実を理解する」というプロセスを楽しいものにすることが重要となっていきます。それが最も価値のある学習体験につながっていくのです。そもそも、退屈なことを自発的にやる人間はいません。楽しいから自発的にやるのです。「外なる物差し」を意識するあまり退屈なことばかりをしようとするから、人生はつまらないものになる。受験エリートはその最たるものかもしれません。
他方、「内なる物差し」によって自発的に学習をしたり、仕事をしたりしていけば、人生はそれだけ豊かなものになるのです。そのためにも、子どもの頃から内発的欲求による学習体験が必要になっているのです。
「驚き」と「感動」の学習体験を実現する3要素
――具体的にどのような学習体験をしていけばいいのでしょうか。
まず必要なことは「驚き」と「感動」です。驚きと感動こそが、楽しさを生み出すのです。この驚きと感動の学習体験を実現させていくために必要な3つの要素があります。
その1つ目が「ドラマツルギー」です。これは文字どおり、物語を面白くドラマチックに仕上げていくために必要な要素であり、多くの小説やドラマ、アニメ作品でも活用されているものです。このドラマツルギーの手法を子どもたちが勉強すべきものに活用していく。物語的に伝えていくことで、子どもたちに驚きと感動を与え、熱中したり、やる気を引き出したりすることができるのです。
2つ目が「ドライビングクエスチョン」です。これは「考えたくなる問い」を、物語的な学習体験の中に入れるということです。学習には「考える」「不思議に思う」「納得する」という体験が欠かせません。物語と学習体験の違いは「どう思うのか」「なぜそうなるのか」「何が違うのか」。そうした問い、クエスチョンをいかにつくるかにあるのです。