ここまでできる公立小の「総合的な学習」の可能性 三越伊勢丹と、仮想世界でファッションショー

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これらを受け、今回のプロジェクトにつながります。総合は教科横断的な学びだと思うので、ほかの教科とのつながりや流れを意識しながら年間を通した授業を設計することを意識しています」

総合的な学習は、すべての学びの核

「総合的な学習は、自分で課題を見つけ、課題解決の方法を考えることが大切であり、子どもたちが社会に出て向き合う“仕事”そのもの。“社会に出るためのロールプレイング”として非常に大切な学習で、すべての学びの核として位置づけられると思っています」という山下氏。前職は会社員で、食品会社で営業職だったというだけに、説得力がある。

「原体験としてあるのは、前職の上司との出会いと『リフレクション(内省、自己内対話)』からなる自分自身の大きな成長です。その上司は一つひとつの仕事に真摯に向き合い、部下に対しても自分に対しても厳しい方でした。上司と出会い、私は考え方が変わりました。この経験により、人との出会いは人を変えるということを学びました。学校に多くの人に来てもらい、子どもたちが教員だけでなく実社会の多くの人たちと出会うことで、人生を豊かにしてほしいと思うようになりました。

また、商談が終わった後、上司から毎日のように電話がかかってきて、『なぜ○○のように考えたのか』などのリフレクションを通してしだいに自分の中に問いが生まれ、勝手に考え出し、成長していく自分に気づきました。その経験により、子どもたちが小さい頃から自分の中に問いを持ち、リフレクションができるようになると、多くの経験が何倍も有益で価値あるものになりえるのではないかと思いました」

会社員時代、上司から「給料の10%は本代に使いなさい」と口を酸っぱくして言われ実行するうち、気づいたら教育書がたまっていったという。

「どんなことをしていても、根本にあるのは教育だな、と。その頃、東京都で初めて民間人校長として採用された藤原和博さんが、自身の中学校をハブとして企業や社会とつながっていく様子を見て、教育業界はこれからどんどん変わっていくのではないかと感じました。自分も教育を通じて社会貢献をしたいと思い、働きながら通信で小学校教員の資格を取得し教員になりました」

良質な経験とリフレクションで自律した学び手を育てる

総合的な学習を通して「自律した学び手」を育てていきたいと語る山下氏。

「自律した学び手を育てるためには、良質な経験と良質なリフレクションが大切だと考えています。総合学習と教科学習をひも付けながら学びを進めていくことで、重層的な経験となり、子どもたちの心を動かす。と同時に、リフレクションの質を上げていくこと。リフレクションの質を上げるために、学活の時間を利用して、カードゲーム感覚でチーム内に深い対話を引き起こす子ども向けのリフレクションカードを実践したり、日々心が動いたことを思い出し、自己内対話や問いをつづる『内省ノート』に取り組んでもらったりしています。総合の時間だけでなく、普段から思考力を養っていくことで、子どもたちの成長速度を上げていくことができると思います。

また、教員が、子どもたちが意欲的に学ぶようなプランを設計することも大切です。今回のプロジェクトではバーチャルファッションショーを行うなど最終的なアウトプットは必ず社会につなげ、『自分たちの力で動いた結果、社会が動く』という経験を重ねていくことも、子どもたちが社会につながる道になると思っています」

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