ここまでできる公立小の「総合的な学習」の可能性 三越伊勢丹と、仮想世界でファッションショー
そして、各班の発表の時間に。
「私たちがデザインした服のテーマは、『ドラゴンと宝石とオーロラ』です」
「上半身と下半身を『平和』と『悪』に分けて、2つの間に『自然』を描いてみました」
「きれいな自然を感じて、雲がふわふわしている様子を表しました」

それぞれのグループの児童が、完成した絵を掲げながら、自分たちの作品について述べた。“右へ倣え”ではなく、「絵を見てどう思ったのか」「グループでどのように話し合ったのか」「デザイン画をどのように仕上げたのか」などについて、“自分の言葉”で話そうとする姿勢が印象的だった。
仮想世界でバーチャルファッションショーを実施
学校外の人材や保護者など多くの人が関わる手の込んだこの授業は、5年生の今年度の総合的な学習の問い「テクノロジーと人間が共生する社会とは?」について探究する “プロセス”の一部なのだという。

(写真:三越伊勢丹提供)
「『テクノロジーと人間が共生する社会とは?』の問いに対し、これまでドローンやAIなどについて学習してきました。現在は、仮想都市プラットフォーム事業『REV WORLDS(レヴ ワールズ)』を開発・運営する三越伊勢丹さんとコラボレーションして授業を実施しています。三越伊勢丹さんによる仮想世界の体験、アバターという3次元でのコミュニケーション、服という自己表現を通したコミュニケーションについて学びながら、子どもたちは、動画などから感じた思いをグループごとにまとめ、半立体の抽象画を作成しました。それを基に、1グループで1作品アバターの服をデザインし、プレゼンテーション大会を行います。最後は、審査会を経て三越伊勢丹さんの仮想世界でバーチャルファッションショーを実施するというプロジェクトです。
プロジェクトの中で、『抽象画から服のデザインに落とし込む作業が、子どもたちにとって難しいだろう』ということになり、三越伊勢丹さんから『Keio Fashion Creator』さんを紹介いただき今回の授業が実現しました。次回以降の授業では、今日のワークをフィードバックしながら、自分たちで作った半立体の抽象画を使って具体的にデザインしていきます」

総合的な学習の授業計画は、年度初めに立てるという山下氏。
「まずは1年を通じての問いを立てます。今年度は、社会が発展していく中でテクノロジー(技術的発展)は不可欠なものである一方で、工業化、経済的な発展の陰で環境問題などの歪みが出始め、これらの流れ全般を捉えたいと思い『テクノロジー』を核に据えました。1学期は大学を休学して日本全国の学校で講演活動を行う環境活動家の露木志奈さんに来ていただき、気候変動についての話を聞きました。これを国語の単元『環境問題を考えよう』につなげ、『テクノロジーは発展すればいいということではない』『地球を守らないといけない』など、テクノロジーとSDGsについて学んできました。